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[老朽マンション対策]2013.10.1

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 当事務所の2012年1月1日付コラム「マンション法〈区分所有法〉改正について」(*1)にて、政府が老朽化したマンションの建て替えを促進するために、区分所有法における建替決議の成立要件を緩和する方向でいるということをご説明しました。しかしながら、コラムでも述べましたが、建替えに反対する人は決して“偏屈者”ではなく、老後の生活を考えるととても建て替え資金を出せない高齢者が多数というものでした。ですから、建て替え決議が成立した後は、そのような高齢者の人たちは、建替え資金を供出できず、新しいマンションに再入居することなく、老人ホーム等に転居していくケースが出てくるであろうから、そのケアが必要であるということを申し上げました。
 日経の1面に「老朽マンション売却促す 政府『住民合意8割に緩和』」という記事が出ていましてびっくりしました(*2)。というのも、12年1月の時期においては、政府もまだ区分所有法に基づく“マンションとしての建て替え”にトライしようとしていたわけですが、今回の案は、建替えではなく、売却(建物価値はほぼないでしょうから、更地としての売却ということになりましょうか)そのものを促進して、マンションを建て替えなくても、商業ビルでもいいというところまで踏み込んだ施策案であるからです。どうやら、邪推しますに、12年1月のコラムで私が指摘したように、マンションの建替決議の成立要件をいくら緩和したところで、建替え資金を供出できない区分所有者が少なからず出てくるのは必須であり、建替え決議が成立したからと言ってもそれでめでたしということにならないということが、政府にもわかってきたもので、それならばということで、区分所有者全員の合意がなくとも、8割の人が賛成すれば、全員の区分所有権を一括して第三者に売却できるようにして、根本的に老朽化マンションの建替え対策を推進しようと考えたのだと思われます。
 考えてみれば、他人の財産権を多数決とはいえ処分することができるというのは、「財産権絶対」という財産法秩序を相当コペルニクス的に転換した施策案だといえます。となると、区分所有権法を改正する、特に、一括売却に反対する区分所有者に対する法的手続の保障(勝手に安価で売られないために、裁判所が売却許可決定を出すとか。)などを盛り込む必要が出てこようかと思います。一括売却の対象は、昭和56年以前の旧耐震基準で築造されたマンションに限られるとしていますが、うまく機能しだせば、それ以降に築造された新耐震基準のマンションにも適用するということは、政府側も考えているのではないでしょうか。それほど、老朽化マンションの問題は深刻な問題であり、今まで色々と施策を講じてきても一向に建て替えが促進されないということが、今回の一括売却案が出てきたことの背景事情だといえましょう。

(*1)http://www.kanda-law.jp/column.html
(*2)http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC2801B_Y3A820C1MM8000/
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