東京で不動産や法律相談に関する弁護士へのご相談は神田元経営法律事務所へ
神田元経営法律事務所 TEL:03-6418-8011
平日 9:00〜17:00
お問い合わせ

不動産関連業務

TOP > [不動産関連業務]不動産関連業務に関するご相談は神田元経営法律事務所へ

業務内容

神田元経営法律事務所
〒107-0062
東京都港区南青山5丁目11番14号
H&M南青山EAST301号室
地図はこちら

最近の解決事例紹介(不動産編)− 借地非訟事件 2014.9.1

シェア
 この度、A市に所在する借地に関する非訟事件について、裁判所で和解が成立し解決しました。依頼者は、A市にて、地主から土地を賃借し、その土地上に建物を建てて居住してきたのですが、種々の理由から当該借地権を第三者に売却しようと決断して、地主と交渉をしたのですが、全く同意が得られず、そこで当事務所に相談に来られたというものです。

 借地というものは、地主との間に借地契約を締結しますが、民法上、地主の同意なく、勝手に第三者に借地権を譲渡することはできません。借地契約は、あくまで、地主と借地権者との間の二当事者間契約であり、地主は借地権者との人的信頼関係に基づいて契約し、契約を維持するものですから、ある日突然全く知らない第三者が借地人として入ってきても、地主としては困ってしまうからです。また、借地上の建物が古くなってきたからといって、借地権者は、地主の同意なく、建物を建て替えることもできません。借地契約というのは、建物が存在していることが、更新など借地契約を継続させていくための条件となっていますので、地主の同意なく建物を建て替えることができるとすると、事実上半永久に借地契約が存続されてしまうことにもなりかねないからです。
 しかしながら、借地権の譲渡や、建物の再築について、地主にとって不利益にならないケースにおいても、地主が同意を出さないとすると、反対に借地権者としては、投下資本の回収ができないことにもなりかねず、これも借地権者の負担となる可能性があります。そこで、借地借家法においては、借地権譲渡や、借地上の建物再築について、地主が不利になる事情もないのに、それらを拒絶する場合には、裁判所が当該地主に代わって、借地権者に対して許可を出すことが規定されています。これを裁判所の代諾許可といいます。

 今回の事件においても、依頼者から相談を受け、借地権の譲渡、および建物の再築許可を出したとしても、特段地主にとって不利益となる事情は見当たらないと判断しました。そして、すでに依頼者と先方との任意交渉では、同意が得られていませんでしたし、交渉しても当方に有利な条件を見つけるのが困難と判断し、A市を管轄する地方裁判所に、借地権譲渡及び建物の再築についての代諾許可を申し立てしました。この申立ては、通常の「訴訟」ではなく、「非訟」事件という取扱いになります。
 非訟というのは、文字通り“訴訟に非ず”というそのままの意味であり、例えば、甲さんが乙さんに金を貸したので返してくださいという訴訟事件であれば、両者の権利義務、そもそもそんな貸金の事実があったのでしょうかということをまず確定させることになるわけですが、一方、非訟事件というのは、両者間の関係については、既に権利義務の関係については存在を認めたうえで、それでも両者の話し合いで解決が図れない事項、例えば、借地権譲渡についての同意料、借地上の建物の再築についての同意料などについては、裁判所で後見的に判断してあげましょうということで、権利義務を争わない以上「非訟事件」というくくりになるのです。
 本件の場合においても、借地権譲渡の同意の代諾許可、および借地上の建物の再築同意の代諾許可について、裁判所に申し立てをしましたが、その申し立ての際は、借地権譲渡同意料、および建物再築同意料をそれぞれ具体的な金額を付して提出しました。もちろん、法的に決められたものではありませんが、不動産取引慣行では、借地権譲渡の同意料は、借地権価格の約10パーセント、建物再築同意料は、更地価格の2から5パーセントとしているようで、今回の申立書においても、その数字を記載したものです。両同意料については、最終的に両者の合意が得られなければ、裁判所が、解決金名目で金額を決めて決定(裁判ではなく非訟ですので、判決ではなく、「決定」となります。)をすることになります。
 今回の事件については、申立後、裁判所から、両同意料について何らかの金額が“解決金”として、提示されるかと思っていましたら、早い段階で、先方、すなわち地主側から、依頼者所有の借地権を引き取りたいという案が出てきました。当方の依頼者としても、当該借地権を第三者に譲渡するのか、借地権の買戻しで投下資本を回収するのか、いずれにしても借地権者にとってみれば同じ効果が得られるのであれば、方法にこだわらないということで、その段階から、借地権の価格評価が争点となっていったというものです。借地権評価について、両者の主張が真っ向からぶつかり、全くギャップを埋めきれないというケースであれば、裁判所の選任する鑑定人(通常、不動産訴訟であれば不動産鑑定士)が鑑定をし、その鑑定額によって和解においても、決定においても解決金額が決まってくるのですが、今回は、裁判所鑑定は行わず、裁判所から和解案として金額が提示され、地主から、借地権者である依頼者に一定の金額を支払うことと引き換えに借地契約を合意解除する、すなわち借地権を買い戻すという内容で和解が成立しました。
 このように借地非訟事件では、当初の申立が借地権譲渡についての代諾許可などであったとしても、解決として借地権の買い取りとか、底地権の買い取りというように、借地関係を解消するような解決に至ることもありますので、色々な選択肢を分析しておくことが重要といえます。
シェア