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いよいよ18歳成人に

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[いよいよ18歳成人に]2018.8.1

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 日本の民法では、第4条で「年齢二十歳をもって、成年とする。」という規定に基づき、20歳以上の者を成年者としています。もっとも、「20歳未満であっても、婚姻していれば成年者とみなされる(民法第753条)」という例外規定がありますが、これは結婚すれば親からも独立して家計を持つからという理由からでしょう。
 本年6月13日、成人の年齢を20歳から18歳に引き下げることとした改正民法が、参院本会議で可決・成立しましたので、約4年後の2022年4月1日から施行されることとなります。明治9年の太政官布告で成人年齢を20歳と定めて以来、改正は実に約140年ぶりになされることとなります。

 今回の改正では、あくまで民法の分野における成人年齢を18歳にするものですから、他の法分野における成人年齢は別物だということです。既に、成人年齢を18歳にしている法律は結構あり、皆さんよくご存じのとおり(?)成人映画は「18歳未満禁止」ということになっていますね。従い、各法律の分野で、民法のように成人年齢を18歳に引き下げるのか、もう引き下がっているのか、20歳で据え置きなのかは、それぞれの法分野における成人年齢に求めるところにより決まってくるものと思われます。例えば、飲酒については未成年者飲酒禁止法、たばこは未成年者喫煙禁止法において、それぞれ20歳とされていますが、どうやら健康管理の観点からすれば18歳に引き下げることでより悪影響があるものと考えられていますから、20歳のまま維持されることになると思われます。また、公営ギャンブルにおいても、18歳に引き下げても多くの人が学業に従事していることからして教育上の観点からも引き下げがなされることもなさそうです。
 ところで、国民年金は、現在20歳以上60歳未満の人に保険料納付義務が課されていますが、これについては、健康上の観点、教育上の観点もありませんから、どうでしょう、引き下げということもありうるのでしょうか。20歳からの納付義務でも、実際のところは、就職するまでは親が年金保険料納付をしているか、学生納付特例制度により納付猶予申請しているでしょうから、これが18歳からというと(親の)財政上の観点と、国の年金財政状の観点のせめぎあいとなるのでしょうか。

 公職選挙の選挙権につきましては、平成28年6月に18歳に引き下げられましたことは最近のニュースです。刑事事件における成人年齢の問題もよく議論になります。現在は、20歳未満の「少年」の刑事事件については、保護処分等の特則が定められていますし、刑事罰を科す場合において18歳未満のときに犯した罪については死刑に処することはできず無期懲役等への必要的減刑の対象とされているなど、成年に比べて刑事責任について“軽く”なっています。刑事責任についても、民法における成人年齢が引き下げられたこととの釣り合い、特に少年犯罪についての昨今の世間の厳しい目からすれば、引き下げとなるのでしょうか。もっと下世話なレベルで言えば、「成人年齢引き下げは賛成だけど、大学入試センター試験と成人式がとても近くなるので困る」という高校生の意見もあるようです。本人たちにしてみれば深刻な問題かもしれません。

 民法上の成人年齢が18歳に引き下げられることによって一番問題となるのは、法律行為の取消の問題だと言われています。民法5条においては、(未成年者の法律行為)として、1項で「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。・・・」、2項で「前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。」と規定されています。未成年者の思慮の足りない法律行為、例えば高価なものを購入するとか、ローン会社から借入れをするとかなどの行為については、原則親の同意がなければいけなく、同意がない場合は後になっても取り消すことができるというものです。それが、成人年齢が18歳に引き下げることにより、取消ができなくなるということが問題となりそうです。18−20歳の年代は、高校を卒業して大学生や社会人になることで相当社会的活動の範囲が広がり、高校生の時のように親が何から何までチェックするというわけにもいかなくなるでしょうから、不用意な売買契約、ローン契約などをしてしまうリスクは高くなるわけですから、それが取消できないというのは確かに消費者保護の観点からは問題かもしれません。中々このあたりは、じゃあ何歳になれば一人歩き出来るのか、大学卒業して就職してからかなどの話にもなってしまうわけですが、このあたり“18歳”成人の自立の観点と、消費者保護の観点から考えていく必要があるかと思います。
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