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[国際取引と民法改正]2012.2.1

 先日の日経の特集記事にて、日本国内法制が国際取引の実態に適合していないという指摘がされていました。このままでは、国際取引においてますます日本のガラパゴス化が進むとの警告もなされていました。確かに、外国からみると日本国内の法制というのは、ローカル・ルールが多く(労働法制や、不動産法制において顕著です。)、さながら幕末の鎖国状況の日本と行っても大げさではないのかもしれません。

 鎖国も同然と言うのが大げさでないのは、現行の民法が公布から115年を経過し、家族法については戦後大改正がありましたが、取引の基本法となる債権法については、その根本はこの115年変わっておらず、明治中期の日本経済を想定して造り上げた債権法で、当時と大きく変わったこの平成の日本経済を規律するのは、素人でも無理があるなと思うことでしょう。

 民法改正作業を法務省において推進されている元東京大学教授の内田貴先生の「民法改正」(ちくま新書)を読みまして、なるほど思う改正を必要とする項目は色々とありましたが、私が一番改正を必要とすると思った項目は、"消滅時効"です。

 消滅時効というのは、権利行使ができる債権を長い間行使しなかった場合、もはやその権利行使できなくなるという制度です。民法167条は、消滅時効の基本条文であり、10年間行使しないと債権は消滅してしまうと規定しています。ところが、実際の話はややこしくて、私も法律相談を受けた時などは、果たして相談者の有している債権は何時時効消滅するのかを直ちに答えられないほど、特別な消滅時効の規定がたくさんあります。

 たとえば、医師の診療代金、建築士の設計代金などは消滅時効が3年、弁護士の報酬債権は2年、運送賃、宿泊料、飲食代金は1年となっていますが(民法170−174条)、何故に弁護士の報酬が、医師の診療報酬との間に消滅時効について1年もの差があるのでしょうか。司法試験を受験しているころから全く理解できませんでした。明治の立法時に引っ張ってきたフランス民法でそのような規定があったとのことですが、驚いたことに、フランスもドイツも21世紀に入り、フランスについては2005年、ドイツは2003年に、民事・商事の区別なく、消滅時効の時効期間を、驚くべき短期間に短縮しています。多分に、経済の成長に伴ういわゆるドッグ・イヤーの反映ではないかと思います。なるほど、今の日本民法のままでは、国際取引の中で取り残されていくというのは、消滅時効の問題にも表れていると言えると思います。

 日本のガラパゴス化、いや鎖国化傾向は、携帯電話の規格という物理的なプラットフォームの問題のみならず、取引法の基本である債権法という制度的なプラットフォームの問題でも早急に対処しなければならないことは、政府・国民も強く認識すべきことだと思います。