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最近の解決事例紹介(企業法務編)− 所在不明株主が所有する株式の処理 2013.3.15

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 当事務所の顧問先会社は、非上場ではあるが設立以後の経緯があり、取引先に株式を持ってもらっていたので、株主数が数百人にも及んでいました。ところが、何年も経ちますと、所在が不明となった株主が何人も出てきます。たとえば、よくあるケースは、株主ご本人がお亡くなりになられ、相続人の方が会社からの株主総会通知などを受け取ったときに、「ああ、お父さんがこの会社の株主なのか、それでは名義変更しておこう。」と気がついてくれれば、会社の方としても株主名簿の名義人を変更することができますが、相続人の方も気づかず、その後、引越とかされると会社からの総会開催通知などが届かなくなってしまい、“立派な”所在不明株主となってしまうのです。

 顧問先会社も相当数の所在不明株主を抱えていまして総務部として困っていました。そこで、会社法197条により、所在不明株主の保有する株式の処分をすることとなりました。すなわち、(1)株主に対してする通知又は催告が,5年以上継続して到達しなかったとき、および(2)その株主が,継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったときには、会社は、その株式を処分することができるというものです。処分方法は、原則競売なのですが、市場価格のない株式は,裁判所の許可を得ることによって売却することができるというものです。

 実は、今回この裁判所の売却決定を取得する2年前にも、(1)(2)の要件を充足した所在不明株主について、売却許可決定の申立を地方裁判所に申立て、無事許可を頂いたのですが、昨年同じように、同じ裁判所に申し立てたのですが、棄却されてしまいました。なぜそのような相反する結果になったかと言いますと、2年前に申し立てたときには、あて名不明で戻ってきた5年分の総会通知封筒を証拠として出していました。当事務所としては、総会通知が最後に届いた時点から以後5回の総会が経過すれば、上述(1)の要件は充足されるという理解でいたのです。また、その時は裁判所からも何も指摘されず、許可決定が出ました。
 そこで、同じように翌年も申し立てたところ、裁判所から、少なくとも最初の総会通知があて名不明で戻ってきた時から継続して5年所在不明である必要がある、すなわち6回分のあて名不明で戻ってきた総会通知がいるというのです。結局、昨年の売却許可申立は棄却されてしまいました。ということで、今年は6回分のあて名不明封筒をそろえて申し立てまして、売却許可決定を頂いたというものです。

 かように所在不明株主の株式の処分については、非常に時間も手間もかかるわけですが、それでも会社としては、まめに実施しておくべきだと思います。というのも、会社の意思決定としての株主総会決議については、過半数による普通決議、議決権の3分の2以上の賛成による特別決議があるわけですが、株主が拡散されていますと、なかなか会社としては事前の根回しが難しくなります。株主数が少数であれば、特に組織再編などにおいて迅速に決断できることとなり、機動的な会社経営が実現できるからです。決議に関わらず、株主全員が今から株主総会をやろうと言いだせば開催通知も必要とせず即時開催可能となりますので(全員総会と言います。)、非公開会社においては、株主へのコミュニケーションの関係で所在不明株主はなくしておくべきだということになります。会社の総務部としても、常日頃、株主名簿の管理をしておくことが必要になるわけです。

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