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最近の解決事例紹介(企業法務編)− 不動産競売による債権回収 2016.7.1

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 ある依頼者から債権回収の要請を受けました。何でも数年前に、依頼者が、知人のA氏から、事業資金として相当額の融資を依頼されたのですが、当時事業を手広く展開していたのが不安だったため、A氏に対して、不動産を担保に入れるように要請しました。しかし、A氏は自ら不動産を所有していなかったので、A氏の知人であるB氏に、B氏の所有する都内のマンションに抵当権をつけてもらうこととしました。このような保証の仕方を、「物上保証」と言い、B氏は「物上保証人」と言われます。
 依頼者としては、物上保証の対象となるマンションの価値評価をまずしました。都内有数の高級住宅街に所在するマンションですので、市場での価値も相当額あるのですが、第1順位抵当権として某銀行が住宅ローンの担保をつけていました。そこで、依頼者としては、当該マンションの市場価値を調査し、第1順に抵当権がまるまる残っていたとしても、相当の余剰があると判断して、当該マンションに第2順位抵当権を設定してもらうことと交換で、A氏に事業資金を融資することとしました。なお、念には念を入れて、B氏には物上保証人と合わせ、連帯保証人にもなってもらったとのことです。

 依頼者にとって、心配していたことが現実となり、主たる債務者であるA氏からは弁済がなされず、何度も督促をしたのですが埒が明かず、止むを得ず物上保証人から回収することとなり、B氏との回収交渉を当事務所に依頼することとなったものです。そこでまず、B氏に対して、A氏の債務不履行の事実を告げ、連帯保証人兼物上保証人として当該貸付金の弁済をお願いしました。しかしながら、B氏としてもそれだけのキャッシュが手元にはなく、分割での弁済とか色々と交渉をしてみたのですが、結局合意に至らず、止むを得ず、B氏のマンションをいわゆる任意競売することとしました。

 今回任意競売の対象となるマンションには、上述のとおり、第1順位の抵当権が付いていますが、住宅ローンですので、「普通抵当権」と言われる物です。すなわち、住宅ローンの元本は、通常弁済を続ける限り、どんどん減っていきますので、後順位の抵当権者にとってみれば、どんどん回収可能額が増えて行くこととなります。これが第1順位が、事業資金融資や手形割引のための担保のための「根抵当権」であると、通常、極度額一杯まで債務者としては借りこんでいるでしょうから、余剰額が増えてくるということはまずありません。その点、本件の住宅ローンも相当期限が経過しているので、相当元本が減っていると予想されました(これが、住宅ローンが始まったばかりですと、利息ばかり支払っていてなかなか元本は減っていないものですが。)。

 また、ラッキーなことに、依頼者がA氏に融資した時期から比べて、都内のマンション価格が相当上昇していて、実際に落札された額は当初想定の落札額を大きく超えるものでした。競売と言うのは、どうしても市場での価格から2−3割は安い価格となる傾向があります。なぜなら、通常の不動産売買ですと、売主としては売るための努力、例えば内見とかの手配を惜しまないのですが、競売と言うのは、売主となる債務者にとって一日でも引きのばしてそこに居住したいというのが通常ですから、内見などできないまま、いわゆる“見ずテン”で入札をしなければならないのでどうしてもその分安くなってしまうのです。これをいわゆる競売減価と言うのですが、今回はそれもなく高く落札され、予想通り、第1順位の住宅ローンの元本も相当減っていたので、依頼者への配当は当初想定を上回ることとなりました。

 本件から学べることは、主たる債務者でも、連帯保証人でも、所有する不動産が存在する場合には、たとえ第1順位抵当権者がいてもあきらめずに、連帯保証と合わせて第2順位の抵当権も確保しておくことが重要です。連帯保証だけでも公正証書にしておけば、いわゆる強制競売を申し立てることはできますが、他にも債権者がいる場合は、債権者間で債権額に応じた配当しか得られないので、やはり優先的回収を図るのであれば、物上保証も必要だということでしょう。
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