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最近の解決事例紹介(企業法務編)− 取締役退職慰労金請求 2014.12.1

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 今回の事件は、ある会社の取締役を退任した人から、会社の役員退職慰労金規程で算出された、本来もらえるべき金額を退職慰労金としてもらっていないので請求してほしいというものです。
 どのように、会社から依頼者に退職慰労金が支払われていたかというと、(話を簡単にするために仮定の数字で申し上げると)規程では5000万円もらえるところ、株主総会決議では3000万円しか決議してもらえず、その3000万円も内1000万円は、相談者が在職中に第三者会社に貸し付けた1000万円が回収されていないので、その1000万円が回収されたら支払うという内容での決議でした。従い、相談者は2000万円しか受領しておらず、残りの3000万円を会社に請求してほしいというものです。当初は、任意交渉したのですが決裂し、会社及び取締役らを被告として、裁判所に訴えを提起することとなりました。

 本件においては、論点が二つあり、一つは決議された3000万円のうちの未払の1000万円についてをどのような法的構成で請求していくかということと、もう一つは、役員規程で算出される5000万円と実際の決議された3000万円との差である2000万円をどのような法的構成で請求していくかということでした。
 まず、1000万円部分ですが、これについては、現在、会社が当該第三者に弁済請求を継続しており、一部分は回収できているのですが、それ以上回収することが困難でないが、少なくとも近日中に全額回収できる状況ではなかったという事情がありました。そこで、当方の請求原因としては、会社の株主総会で決議されたのは確かに3000万円であり、そのうち1000万円は、第三者に同額を貸し付けていた経緯があるので、その回収に支給時期をあわせようとしたのが会社の意図であり、ということは、回収が困難であると合理的に判断された暁には、未回収額をその時点で相談者に支払うという「不確定期限付」の決議をしているのであり、当該不確定期限は既に到来しているので、会社としては相談者に支払う必要があると主張しました。それに対して、会社側は、当該第三者への1000万円の貸付は相談者に責任があるものであり、総会での決議はあくまで回収できたならばその回収分については支給するという「停止条件付」の決議であるとの反論がなされました。 
 次に、支給決議されなかった2000万円の部分ですが、当初は、会社に役員退職慰労金規程があるのであれば、それが法的根拠になるものと考えていたのですが、判例を調べていくと、幾ら会社に役員退職慰労金規程があっても、役員退職慰労金も役員報酬と同視されるのであるから、取締役によるお手盛り支給防止の原則から、株主総会による決議が必要だというのが裁判所の判断というのが分かってきまして、会社に対する請求もさることながら、退職した相談者以外の取締役に対しても、本来は、役員退職慰労金規程に基づく金額を株主総会に上程する議案に含むべきであるにもかかわらず、それをなさなかったという不作為の取締役の責任違反であるという法的構成にしました。しかしながら、よくよく考えてみると、本件会社は、実質的に一人株主であり、そうだとすれば、お手盛り防止の原則に抵触することもないし、2000万円の支給決議をしなかったことは、本来、退職取締役に支払うべき金額を支払わなかったことで、株主として退職取締役に対する損害賠償責任を負うとして「不法行為」構成をとったものです。

 両論点について、なかなか打開に向けての道筋が見えてこず、また、会社側代理人がきっちりと反論をされてきたことから、当方としては、裁判所としてどのような結論出すのか興味のあったところですが、種々の事情もあり、裁判所において和解が成立することとなりました。裁判というものは、常に白黒をつけるということではなく、訴訟当事者間の紛争の解決を目的とするものですから、様々な事情を取り込んで、今回のように和解で終結するということも珍しくはないのです。
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