東京で不動産や法律相談に関する弁護士へのご相談は神田元経営法律事務所へ
神田元経営法律事務所 TEL:03-6418-8011
平日 9:00〜17:00
お問い合わせ

遺産相続関連業務

TOP > [遺産相続関連業務]遺産相続に関するご相談は神田元経営法律事務所へ

業務内容

神田元経営法律事務所
〒107-0062
東京都港区南青山5丁目11番14号
H&M南青山EAST301号室
地図はこちら

遺産分割解決事例 − 遺言と任意後見 2014.7.15

シェア
 今回のご相談は、相続人以外に遺贈をしたいので遺言を作成したい、また、自分もそろそろ高齢になってきたので、意思能力が減退したときに備えて成年後見人を事前に決めておきたいというものでした。最近は高齢者と言っても体力的にもまだまだお元気だし、判断能力も衰えていない方が多いのですが、加齢による意思能力の減退は避けて通れないものでありますし、何よりも死は避けて通れないものであることから、自分自身で自分のことを判断できるうちに、遺言を作成する、また、成年後見についての手配をしておくということは自己責任の観点からも望ましいことかと思います。

 そこで、まず遺言の作成からですが、自筆遺言という方式もありますが、遺言としての有効性や、遺言の内容の実現性などを担保するためにも、折角作成するのであれば、公正証書遺言の方式にすべきかと思います。公証役場に行って、公証人に口述して遺言を公正証書の形にしてもらうのですが、原案については、遺言者が持っていく必要があり、とはいえ、公証人も遺言者を取り巻く家庭環境、財産状況などを把握しているわけではないので、一般的なアドバイスしかできないことから、やはり、弁護士と相談してじっくりと原案を練ったうえで、公証役場に持っていくということがベストかと考えます。また、法的な問題は弁護士と交渉人との間で調整をしますので、“絶対”という言葉は使えませんが、クオリティの高い遺言が作成できるものと思います。遺言を作成する際に、誰に何をあげるとかの内容面はともかく、形式的なことで注意が必要なのは、「遺言執行者の指定」と、「遺言で遺産を取得することとされた者が遺言者より先に死亡した場合の手当」が重要であるということです。

 「遺言執行者の指定」がなぜ重要かというと、遺言事項が、遺言の効力発生とともにその効果も“完結的”に生じるものばかりならばいいのですが、例えば、遺言事項が相続財産の処分を指示するものや他人に対して給付をするものである場合には、これらの処分行為・給付行為を確実に実行させる必要があり、それらの実行を相続人らに任せておいては、相続人間で対立が生じている場合には、デッドロック状態になってしまい、折角の遺言が十分な効力を発揮できないということになりかねません。
 そこで、これらの処分行為・給付行為を行うために、相続人に代わって執行するのが、遺言執行者なのです。遺言中に遺言執行者を指定しておけば、遺言者の意思を忖度できる人物を指名することができ、例えば、弁護士・司法書士など公的立場の専門職を遺言執行者とすることもできるわけです。なお、専門職を遺言執行者として指定する際は、遺言執行者の報酬についても同遺言中に規定しておくことが必要で、さもなければ遺言執行者が無償奉仕することにもなりかねないからです。

 また、「遺言で遺産を取得することとされた者が遺言者より先に死亡した場合の手当」というのは、通常、遺言で遺贈を受ける人(受贈者)は遺言者よりも年齢が若い場合が多いので、順番としては遺言者の方が先に死亡するということになるのでしょうが、人の運命というのは誰にもわからず、受贈者の方が遺言者よりも先に死亡する場合もあり得ます。これが遺贈ではなくて、通常の相続であれば、相続の開始(すなわち被相続人の死亡)よりも前に相続人が死亡している場合、その相続人の子供らが代わりに相続人となるという「代襲相続」制度が適用されます(民法887条2項)。一番わかりやすい例は、子供が被相続人である親よりも先に死亡している場合、孫が代襲相続人となる、ということになります。
 しかしながら、この代襲相続というのは、遺言においては当然に適用されません。すなわち、受贈者が遺言者よりも先に死亡してしまったら、受贈者の子供たちは、遺言者の死亡時に遺贈を受けることができないということです。そこで、遺言の中に、受贈者が遺言者よりも先に死亡した場合は、受贈者の相続人らが遺贈を受けることができるといういわば“遺言の代襲相続”規定を創設するというものです。「遺言執行者の指定」と「遺言で遺産を取得することとされた者が遺言者より先に死亡した場合の手当」については、一般の方ではなかなか気付かないこともあり、法律の専門職にご相談された方がよろしいかと思います。

 次に、成年後見人の事前の手配についてですが、これにつきましては、任意後見制度というのがあります。どういうものかというと、本人が契約の締結に必要な判断能力を有している間に、将来自己の判断能力が不十分になったときの後見事務の内容と後見する人(任意後見人)を、自ら事前の契約(任意後見契約)によって決めておく制度です。ただし、この任意後見契約については、公正証書により締結する必要がありますので、やはり公証人にお世話になることとなります。この制度も、遺言と同様に、高齢者が判断能力が十分なうちに、自分のイニシアティブで、自分の信頼する人を任意後見人にすることができるのであり、遺言における遺言執行者とパラレルに考えられると思います。

 今回は、公正証書遺言を作成すると同時に、任意後見契約を公正証書で作成したものであり、高齢者の方にとっては、意思能力が減退したときの監護療養についての事前手配、また死亡した後の遺産の処分についての事前手配を一気通貫に行ったもので、このようにパッケージとして公証役場で作成してしまうことが有用かと考える次第です(もちろん、法律の専門職にご相談を頂いて)。
 何よりも、遺言と任意後見契約を作成することは、「これで死ぬまでのことの手配は済んだ。より自分らしく後半生を生きていこう。」というご本人自身の気持ちの整理にもつながり、前向きな気持ちになれることからも、活用する価値は十分にあるかと思う次第です。
シェア