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神田元経営法律事務所
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遺産分割解決事例 − 遺産分割における利益相反 2012.12.1
小職が仕事上非常にお世話になった人が、今年2月に亡くなられました。生前、ご本人からも相続はよろしくと言われていたところ、ご遺族から遺産分割に関わる法的手続を依頼されることとなり、その案件がようやく完了しました。ようやくというのは、相続人間では遺産の分割の内容には全く争いがなく、いわゆる“争族”とうものではなかったのですが、相続人が被相続人(亡くなられた方)の実の娘お2人と、お1人が娘さんの子供(未成年者)、すなわち孫を被相続人の養子にしていましたので、そのことに派生する問題で時間が掛かったものです。
まず、孫である養子については、養子縁組の際、祖父(被相続人)と祖母を養親にしていましたが、被相続人が死亡されるよりも以前に祖母の方が亡くなられていましたので、今回の被相続人の死亡により、誰も養子に対して親権を行使する者がいなくなってしまったのです。とすれば、常識的には、養子の実の母親に親権が戻るものと考えられるのですが、民法上ではさにあらずで、養親が死亡していなくなれば自動的に元の(養子縁組前の)親権者に親権が戻るというわけではないのです。しかしながら、祖父母と養子縁組したと言っても、実の母親と同居しているわけでして、そこで、小職が代理人となって家庭裁判所に対し、親権者変更の申立てをしたところ、結論が出るまで結構な時間が掛かりましたが、何とか実母に親権が戻りました。
ところが、ここらあたりがお役所仕事もいいところですが、裁判所は、実母に親権を戻すという審判をしているにもかかわらず、市役所および法務局がストレートに親権者変更の申請を認めなかったのです。行政は行政としての判断があるということらしいのですが、これでまたどんどんと時間が無駄に過ぎて行きました。結局は、申請通りに受理されたのですが。
さて、養子はご承知の通り、養親の遺産に対し相続権を有しておりますので、実母に親権が戻ったことでもあるし、実母が養子の法定代理人として、遺産分割協議書(上述した通り、どのように遺産を分けるかについては、早い段階で決っていましたので、分割協議書の原案はもうできておりました。)に署名捺印すれば遺産分割協議が成立するかとも思いますが、民法上は、そうはいかないのです。いくら相続人間で、ましてや本件でいえば、実母と実の子である養子との間で実際に争いなどあるはずがないとしても、形式的には、相続人間では潜在的に遺産分割については対立関係になりうるわけですから、実母と養子との間は利益相反の関係にあるということになります。このような“利益相反の関係”にあることから、民法上は、養子に特別代理人を付けることが要求されることとなります。これも結局、実母から、家庭裁判所に、小職が養子の特別代理人として選任されることを申し立て、こちらの方は意外と早く特別代理人の選任がありました。選任決定があり次第、小職が養子の特別代理人として遺産分割協議書に署名捺印して遺産分割協議が成立しました。
被相続人がお亡くなりになってからもう9か月が経過していました。今回、なぜ遺産分割協議を急いだかというと、相続税の問題があったからです。相続税の申告は、被相続人が死亡してから10か月以内に行わなければなりません(もちろん、遺産分割協議が成立していなければ、法定相続分で申告しておけば、ペナルティは受けませんが)。相続税の申告の前提として、被相続人の死亡年度の確定申告をした上で、相続税を計算しなければなりませんから、意外と10か月は長いようで短いものです。遺産分割協議さえ、相続人間で成立させればいいと思いがちですが、本件のように、裁判所や、行政が絡んでくると自分たちの努力を超えたところで時間が過ぎていきますし、お役所は他の役所(税務署)の都合は関係ありませんから、よほどスケジュールをきちんと立てて進めないと相続税の申告で困ってしまうことにもなりかねませんので、要注意です。
うちの親はそんなに財産を持っていないから関係ないと思っている方、今回の税制変更で結構相続税の対象となるケースが増えていますから、他人ごとではありませんよ。
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