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最近の解決事例紹介(不動産編)− 土地通行権の事例 2016.6.1

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 都内に土地・建物を所有する依頼者から相談を受けましたのは、当該建物が老朽化したので建替えたいが、隣地で駐車場を所有する者が、依頼者に無断で、駐車場利用者に依頼者の土地を自動車で通行させているので止めさせてほしいというものでした。何でも、隣地所有者の所有する自宅建物の裏の土地に月極め駐車場を設定しているが、公道に出るには依頼者の土地を通るしか方法がないというものです。

 本件の隣地所有者というのは、依頼者の親戚であり、先代、先々代から、当該土地および隣地に関して相続などがあったために、現在の土地所有状況や相隣関係が構築されており、全くの赤の他人との間の相隣問題ということではなく親族間の相隣関係であるところが問題でした。
 先方にも代理人がついているので、当初代理人間で交渉を開始しましたが、先方から、相当古くに親族間でかわした確認書というものが提出されてきました。当方としては(色々な解釈ができる文書で、それ自体問題を含んでいたのですが)、現在隣地所有者が自動車を通行させている依頼者の土地部分については、隣地所有者の建物を建て替えるまでは通行できるということがかろうじて読み取ることができました。そうだとすると、隣地所有者は、当該確認書作成後に、自宅建物を改築していますので通行する権利は既に消滅しているのではないかと当方としては考えました。しかしながら、隣地所有者側は、当該確認書をそのようには読まずに、自動車が通行できる権利を限定を付けずに設定したものであり、隣地所有者が自宅建物を建て替えるか否かに左右されないという反論してきました。

 当事者間の任意交渉では埒が明かないので、当方としては裁判所において判断してもらおうということで、通行権不存在確認の訴えを提起しました。ここで、法的な整理が必要となりますが、そもそも他人の土地を通行できる法的根拠は何かといえば、囲繞地(他人の土地を通らなければ公道に出られない土地を言います。)であれば、民法210条による囲繞地通行権というものが認められるのですが、囲繞地でなければ、当事者間の合意において通行地役権という物権を設定するか、賃借権か使用借権という契約上の権利で通行を可能にするかということになります。当方の主張としては、件の親族間の確認書からは、通行地役権の設定はおろか、隣地所有者及び駐車場利用者が通行に供している部分に賃借権や使用借権を使用したことも読み取れないとして、隣地所有者の通行権は存在しないと主張したものです。それに対して、隣地所有者側からは、根拠が明確ではないものの、通行地役権が設定されているか、契約上の権利として通行しうる権利が存在すると反論してきました。

 結局のところ、最終的には和解成立による解決(期間を決めてそれまでに隣地所有者の通行使用を中止し、当方依頼者は解決金を支払う。)となったわけですが、和解勧試における裁判官の心証としては、件の昔の確認書から隣地所有者の使用借権くらいは認められ、実際に現在も使用している状態を排除することについては躊躇しているようにも思えました。もし、隣地所有者の使用借権が認められることにでもなると、民法599条において、「使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。」と規定されていますので、相当期間拘束されてしまうことにもなりかねません。そこで、当方としては、解決金を支払うスキームでとにかく隣地所有者の通行使用を止めさせるということにフォーカスして和解を成立させることになった次第です。これが全くの赤の他人同士の話であれば、経済合理性だけで(重視して?)権利があるかないかを判断されるものでしょうが、やはり親族間の問題となると、単に経済合理性だけで割り切って判断できるというものでもないということだと思った次第です。
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