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最近の解決事例紹介(不動産編)− ビルの建替え案件(その1)2012.9.14

 9月に入り、銀座所在のAビル再築工事の竣工式に出席しました。小職の立場は、Aビルの共同事業者のアドバイザーという立場です。竣工式後のパーティーにおいて、当ビルの設計者である建築士の先生が「本ビルの設計を依頼されたのが6年前で…」とスピーチされていましたが、それを聞いて、老朽化したビルの建て替えを決意して、実際に竣工するまでには6年もの時間が掛かるのだ、建替えプロジェクト前の準備的手続を含めるとおよそ10年近く掛かるのだと改めて感慨深いものを感じた次第です。どのようにAビルが建て替えられたかという経緯ですが、長くなりますので、今回は前編ということで。

 まさに約10年前、旧Aビルのオーナーから、「ビルの1階テナントの現行賃料が安すぎるので何とか増額することができないか。」という相談を受けたときが始まりです。同ビルの1階には4店舗ほどが賃借人としておりました。確かに賃料の水準は、周辺の新規賃料に比較すると半分以下というとんでもなく安い賃料でした。そこで、小職からは、賃料増額については、まずは任意交渉で増額を要請するものの、任意交渉で当方主張額まで至らないようであれば、裁判所に調停を申し立てる。もしも調停でも新賃料の合意が形成されなければ、賃料増額訴訟を提起し、裁判手続の中で新賃料が決定されていくという説明をしました。

 オーナーとしても是非もなしということで、賃料増額手続を進めることになりましたが、案の定というか、各賃借人とも、あたかも安い賃料が賃借人としての当然の権利だと言わんばかりに、全く任意交渉に応じようとしません。そこで、1階で一番大きな占有面積のテナントに対し、やむなく賃料増額の調停を申し立てました。何故、直接訴訟を提起しないかというと、賃料増額については、まずは調停手続を経なさいと法定されているからです(調停前置主義と言います。離婚と賃料増額だけがその対象です。)。しかしながら、調停も話し合いの延長ですからそこで解決するべくもなく、速やかに訴訟手続に移行しました。訴訟手続においては、当該テナントに対し、満足のいく数字ではなかったものの、ある程度賃料増額を獲得しました。そこで、その増加率に基づき、他3店舗に対しては、「○○さんのところはこれだけ賃料アップを裁判所に認めてもらいました。」ということで、しぶしぶ同意してもらい、同程度の増加率で賃料増額を獲得しました。

 旧Aビルの1階テナントの賃料増額が一応完了したところで、小職もお役御免かと思っておりましたら、オーナーから「実は、現在のビルを建て替えたいので、アドバイザーとして入ってほしい。」というお話でした。その時点になって小職は、なるほど、オーナーはビルの建替えという先のことまでも考えて賃料増額を小職に依頼したのだなあとオーナーの先見の明に感心した次第です。すなわち、ビルを建て替えるためには、現在入居している賃借人に賃貸借契約を合意解除してもらい、立ち退いてもらわないと、勝手にビルを取り壊すことができません。その際、いわゆる立退料を賃借人に支払わなければなりませんが、現在の賃料と他物件に移った場合の賃料との間に差がある場合、その差額を補償することも立退料の内容として含まれてきます。安く貸していた場合、その差額が巨額になることもまれではありません。語弊があるかもしれませんが、「安い賃料で貸しているがために、立ち退いてもらう時に、多額の差額補てんを支払わされる」という「恩を仇で返される」ことになりかねないのです。従い、老朽化したビルを建て替えるにおいて、もし賃借人が入居していて賃料が安い場合は、立退き交渉をする前の早い段階から、賃料増額の手当てをしておく必要があるのです。上述しました通り、賃料増額は、調停手続等を含めて、最悪1年ほど裁判に掛かりますから、よほど余裕を以って建替えの計画を立てていく必要があるのです。(以下、次回に続く。)