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最近の解決事例紹介(不動産編)− 共有不動産の賃料に関する不当利得返還請求 2014.9.15

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 本件は、親族間で、不動産を収益物件として共有していたのですが(仮にAさんとBさんとします。)、共有していた期間の賃料については全てAさんが収受してしまい、Bさんは全く分配されていなかったので、Bさんが、その共有持ち分に基づき賃料相当分の収益を不当利得として、Aさんへの返還請求を裁判所に訴えた事件です。当方は、被告となったAさんの訴訟代理人として関与したものですが、地裁での一審判決で当方が勝訴(反訴した部分は棄却されましたが。)しまして、Bさん側が控訴したのですが、高裁でも当方勝訴判決がなされ、Bさん側が上告受理の申立てをしなかったので、高裁での当方勝訴判決が確定しました。

 Bさん側からの返還の主張に対し、当方側としては、賃料として収受した金員から必要経費を差し引いた部分については、共有持分に応じて、Bさんにも分配していたものであり、何ら不当利得が存在するものではないことを主張して反論しました。しかしながら、相当以前に共有関係が解消していましたので、共有当時の書面での記録がAさんのもとにも残っておらず、また、およそ親族間、それもごくごく近い親族間で共有している物件について、いちいち金銭を配分したときに領収証を取っておくということは稀でしょう。それに本件では、そもそも、Aさんは、収受した賃料から必要経費を支払った後の残金から、銀行借り入れを弁済して、後はBさんと分配していたので、手元に残っているものはないに等しい状況でした。

 一審の地裁判決においては、AさんがBさんに対して、毎月20万円(多いときは月30万円)を現金で渡していたことに着目し(この事実は、Bさん側も認めていました。)、法的構成としては、AさんとBさんとの間には、Aさんが収受した賃料から、必要経費及び借入弁済を控除した残金から、Bさんには低額の20万円を支払うという管理委託契約関係が成立していたと解されるとの判断がなされ、Aさんには不当利得は存在しないという結論が示されました。なるほど、裁判所としては、当方主張の持分による分配というものがうすうす感じられるものの、Aさん側としてもそれを裏付ける確たる証拠がないので、それでは原告も被告も共に認めている月20万円の支払について争いがないものとして、両者間の管理委託契約を認定したというものです。

 高裁においても、この両者間管理委託契約構成を是認し、控訴人であるBさんの請求を棄却する旨の判決がなされました。高裁で敗訴となった場合には、最高裁への上告ということが考えられますが、現在、上告の前段階として「上告受理の申し立て」という制度により、まずは判決を出した高裁において、当該上告が最高裁が裁判するのに値する事件がどうか判断し、値すると判断された場合に初めて最高裁判所が受理するという手続になっていますが、今回、Bさん側は、同申立を申立て期限までになさなかったので、高裁判決が確定するということになったものです。

 今回の事件で感じたのは、裁判所として判決を書くには、やはり固い証拠で理由付けをする必要があり、固い証拠というのは、書面でなされているか、書面でなくとも原告被告両者間において争いがない事実であるということです。
 本件では、先に述べた通り、当方Aさん側には、持分の配分を裏付ける確たる書面はありませんでしたが、Aさんが、毎月20万円または30万円をBさんに渡していたという事実に争いはありませんでしたので、かかる争いのない事実について、裁判所が、管理委託契約という法解釈をおこなったもので、今後別の事件においても、参考になる事件と思った次第です。
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