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千葉ゴルフ場フェンス倒壊

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[千葉ゴルフ場フェンス倒壊]2019.11.1

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 台風15号の通過により、9月9日、千葉県市原市のゴルフ練習場のフェンスが倒壊して、近隣の家屋22棟を損壊しました事故から1ヶ月以上も経って、ようやくフェンス、ポールの撤去作業が始まったとのニュースがありました。写真からみると相当高さがある鉄製ポールと幅のある緑色の網フェンスのようで、これが倒れてきたのですから、近隣の住宅もひとたまりもないのがよくわかります。

 そこで、家屋に損害を受けた住民たちは、ゴルフ練習場側に損害賠償請求をしていきたいと考えるのですが、ゴルフ場側の代理人弁護士は、「天災だからゴルフ場に賠償責任が無い」と言っているようです。果たして、ゴルフ場側に何ら責任が無いのでしょうか。まず倒れたポール、フェンスを撤去しないことには、家屋の修繕も始められません。ようやく撤去作業が始まったとのことですが、この撤去責任については、法的には、「所有権に基づく妨害排除責任」という理論で、住民からゴルフ場に対して、ポール、フェンスの撤去請求ができ、ゴルフ場はその費用・責任でポール、フェンスを撤去しなくてはなりません。すなわち、住民は土地・建物の所有権を持っているわけですが、ポール等が倒れてきたことで、土地・建物に対して妨害物が理由もなく侵入してきたわけで、所有者としては、妨害者に対して、土地・建物の完全なる所有権の行使を妨げるものとして、その妨害排除を請求できることになる訳です。さすがに、ゴルフ場側の代理人もこのあたりは異論を述べないでしょう。

 問題は、天災によりポール等が倒壊したのだから、ゴルフ場に賠償責任が無いという理屈が通るのでしょうか。民法717条においては、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」と規定しています。ゴルフ場の弁護士の理屈は、土地の工作物であるポール・フェンスの設置または保存(維持と言ってもいいでしょう)に瑕疵がなかった、なぜなら前例のないほどの巨大台風によるものだから不可抗力なのだということなのでしょう。
 この争点を解釈するカギは、瑕疵とはどの程度をいうのかになりますが、通説的には「通常備えるべき安全性が欠けていれば瑕疵がある」ということになります。確かに風速50メートルも60メートルもの台風を予測して建てたポールではないかもしれません。しかしながら、上述したように今回倒壊したのはポールだけではなく、網フェンスも一緒に倒壊しています。相当重量のある網フェンスが相当の風速の風を受けた場合、幾ら網目があるとはいえ、鉄製のポールはその負荷に耐えられなくて倒壊した可能性があるように思えます。台風が来る前に網フェンスだけでも取り外しておいていたならば、風圧を受ける部分がさほど大きくない鉄製ポールは倒壊には至らなかったかもしれません。すなわち、通常備えるべき安全性を欠いていたといわれる可能性があると思うのです。少なくとも、ゴルフ場側弁護士のように、一刀両断に不可抗力だと言うのは極論だと思われます。住民側としては、網フェンスが受ける圧力も相当なものであったことを立証して、網フェンスをそのままにしていたことについて「通常備えるべき安全性が欠けていれば瑕疵がある」ということを主張していくことになるのではないでしょうか。

 台風15号による被害も相当なものでしたが、今回の台風19号の被害は、物的被害もさることながら、相当な人数の方がお亡くなりになっており、地球温暖化の進行により、益々このような自然災害が発生していくかと思うと暗澹たる思いです。
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