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日本人の名前は官職から由来しているものが多い

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[日本人の名前は官職から由来しているものが多い]2012.8.1

 国の政治の方は、国民不在の政局論争ばかりで、今月はコラムにするようなネタがなく、雑学的なお話しになりますが、一応、昔の国家組織法である律令に関係するお話しですのでご容赦頂きたくお願いします。

 テレビを見ていましたら、ボクシングのダブルチャンピオン戦の番宣がありまして、五十嵐選手が祖父に捧げる一戦という内容のものでしたが、私が刮目したのが、そのおじいちゃんの名前で、「甚之丞」さんという名前でした。何が驚いたかというと、この名前が古くは大宝律令に定められた官職に由来するものだからです。

 日本人の名前は、律令の官職に由来するものが今でも意外と多いのです。役所の名前に由来するものに関しては、次回以降にお話しするとして、今回は、役所内の位の上下に由来するもの、律令では四等官といいますが、「かみ・すけ・じょう・さかん」に由来するものをお話しします。たとえば、律令下では、愛知県は尾張国と三河国という二国に分かれていましたが、両国のトップ、今でいえば県知事に当たるのが、それぞれ、尾張守(おわりのかみ)、三河守(みかわのかみ)ということとなり、その次官クラスが、「すけ」、たとえば、尾張介(おわりのすけ)、三河介(みかわのすけ)となり、さらにその下は、尾張掾(おわりのじょう)、三河掾(みかわのじょう)、さらに一番下の位として、「さかん」があり、尾張目(おわりのさかん)、三河目(みかわのさかん)ということになります。「かみ・すけ・じょう・さかん」に対応する漢字は、官庁により違ってきます。たとえば、刑部省といういわば現在の法務省では、トップを刑部卿(ぎょうぶきょう)となりますし、内匠寮のトップは内匠頭(たくみのかみ)となります。ちなみに、内蔵寮のセカンドは、内蔵助(くらのすけ)となります。現在のお役所では、「かみ・すけ・じょう・さかん」の名所では残っていませんが、軍隊にその名残があります。すなわち、「将」がかみ、「佐」がすけ、「尉」がじょう、「曹」がさかんに対応しているのです。(これまた、脱線しますが、戦後、大本営参謀の瀬島隆三中佐が、シベリア抑留された際に、強制労働されたとき、「左官」をさせられ、壁塗りをしていたそうです。その時、瀬島中佐は、「佐官が左官をしている」と自嘲していたそうです。実は、職業としての左官も、律令制度で木工寮の属(さかん)が由来とされているものなのです。とすると、確かに次官職である佐官が、最下等官の左官をやっているのは、自嘲すべきことかもしれませんね。瀬島中佐がそこまで知っておられたとすると、この逸話は単なる親父ギャグ以上の含みのあるものと言えましょうか。)

 さて、「かみ・すけ・じょう・さかん」が人の名前に使われているといいましても、一番多いのは「すけ」でしょう。あまり、「〜かみ」さんとか、「〜さかん」さんというのは聞きませんよね。「〜すけ」さんは多いですね。漢字も、「介」「助」「亮」「弼」「輔」などがありますが、これらもすべて律令の四等官から由来するものです。これは小見ですが、たぶん「すけ」が一番語呂がいいのでしょうね。「じょう」も、江戸時代まで存在していたとしてもさすがに現代にも「甚之丞」さんというようにあったとは、驚きです。たしかに、「允」で「じょう」さんという人もいますね。

 では、なぜ律令の四等官が、人の名前になったのでしょうか。これも小見ですが、日本人は、現代でも人の名前を直接呼ぶというのを無意識に避けていますよね。アメリカ人だと、すぐに「ボブ」「マイク」のファーストネームになってしまいますが、日本人は、たとえば、上司のことを「けんじ」とか言いませんよね。「課長」とか役職で呼ぶことが多くありませんか。そこから、官職で呼んでいたのが、いつの間にか名前になっていったと思われます。視聴率の良くない「平清盛」を観ていまして、伊豆に流刑となる源頼朝が、平氏側からも「すけ殿」と呼ばれていて、これは、平治の乱中に「右兵衛権佐」に任じられていたからですが、関東武士の中では、従五位下とはいえ、そんな官位を持っている人はいないし、それどころか官位すらも知らない人も多かったので、皆から名前と思って「すけ殿」と呼ばれるようになったのではないでしょうか。それが脈々と現代まで続き、たとえば、私の義弟は「大輔」といいますが、これはまさに中務省・式部省などにおける次官で、これらの省は大きな役所でしたので、大輔、少輔と2人の次官がいましたので、律令の官職そのまま名前になった例です。きっと、正輔さんなども少輔からきているのでしょうね。

 ということで、今月は軽い読み物で、「日本人の名前は官職から由来しているものが多い」で語ってみました。