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人間とAIの共存について(その2)

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[人間とAIの共存について(その2)]2017.9.1

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 今月は、先月に続いて、人間とAIの共存というテーマを考えてみようと思います。
 どうやら、藤井四段、佐々木六段、三枚堂四段など将棋AIソフトを敵と見るのではなく味方につけて共存を図っていくという昔流の言い方で新人類が現れたということでしょうか。しかしながら、他の業界でもAIは、人間の敵だという認識が多数意見です。どこかのマスメディアが、近い将来AIにとって代わる職業の一覧リストを出していました。
 確か、第1位がスーパーでのレジだったのですが、これはAIというレベルでなくとも、最近はセルフレジが出始めており、確かに将来的には縮小していく業種でしょう。いわゆる専門職という中で高位(すなわち取って代わられる可能性が高い)の業種としては、会計士・税理士の会計専門家がありました。確かに数字というデジタルな世界の話ですので、今までのそれら業務の多くがAIに取って代わる可能性がありましょう。注目すべきは弁護士もそのリストに入っていたことです。私自身これほどアナログな仕事はないのではないかと思っていましたので意外でしたが、確かに言われてみれば、今までの事件を、今までの判例・裁判例を検索させた上で、AIに分析評価させれば、なるほど解決に近道の法的構成を組み立て戦略的なアドバイスができるのかもしれません。

 しかし、私自身、弁護士業務がAIに取って代わるかというとそうは考えていません。幾ら、AIが最適な法律構成を分析・組み立ててくれたとしても、人間界の紛争である以上、相手方も人間であり、結局人間同士の交渉というものが必要となり、人間同士の“実戦”が避けられないのです。AI同士の交渉というのは、考えにくいですし、仮にコンピューター上で“交渉”をしてどちらかのAIが勝っても、人間がそれを唯諾々と受け入れるわけがないでしょう。最後のところは、人間力がカギを握っているものと考えます。
 先日、NHKが特番で藤井四段の強さの分析をしていました。藤井四段がこれまで戦った全公式戦の棋譜をすべて将棋AIソフトにインプットしてみたというのです。そうすると、驚くべき事実がわかってきました。序盤・中盤で藤井四段が選んだ手と、AIソフトが最善手として選んだ手との一致率が極めて高いということです。藤井四段の思考とAIソフトの思考のベクトルがあっていると言えましょうか。終盤においては、迷いなく一気に攻めきるということが、AIソフトの点数評価においても実証されていました。しかしながら、これらのことは上述してきたとおり、誰もが認めることであり、目新しい事実ではありません。ただそれがAIソフトにより、定量的に実証されただけのことです。刮目すべきは、澤田真吾六段との対局で、絶体絶命のところまで追い詰められていたとき(AIソフトもほぼ負けの点数評価を示していました。)、藤井四段が起死回生の一手を打ったのです。凡人にはわからないのでしょうが、特番では、羽生善治三冠と渡辺明竜王がこの起死回生の一手がターニングポイントとなったと解説していました。その藤井四段の一手に対しては2通りの対応が考えられるが、一つを取ると澤田六段の勝ち、もう一つを取ると藤井四段の勝ちということですが、澤田六段は負けの手を選んでしまったというものです。澤田六段も若手実力棋士の一人であり冷静な状況であれば、勝ちの手を選んだのでしょうが、澤田六段は持ち時間をすでに使い切っており、1分以内に指さないと負けてしまう状況まで追い込まれていたため、負けの手を選んでしまったというものです。羽生三冠、渡辺竜王ともこの状況でこの手を打てるところに勝負師としての資質を見たと評価していました。AIソフトでは、そのような一か八かという手は選ばなかったのでしょう。ここに、人間とAIとの共存、しかしながら最後は人間力が決め手となるという未来が見えてくるような気がしました。

 藤井四段のいきなりの七段、八段昇段はなくなりましたが、順位戦のC級2組では2連勝と順調な勝ち星を重ねており、来年の3月には五段への昇格も期待できる状況です。もちろん、それまでに全棋士参加棋戦で優勝するか、タイトル戦でタイトル奪取すれば昇段できますが、棋戦優勝、タイトル奪取は、羽生三冠や渡辺竜王らの強豪を倒していく必要があり、実力伯仲のC級2組での勝ち抜けの方が可能性は高いのですが、その最終戦は、なんとまた三枚堂四段と当たることが決まっており、最終戦まで気が許せない成り行きになることが予想されます。
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