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人間とAIの共存について(その1)

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[人間とAIの共存について(その1)]2017.8.1

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 以前のコラムでも新進気鋭の棋士が現れますよということで紹介しましたが、将棋棋士藤井聡太四段の活躍が目覚ましいですね。30連勝は成らなかったものの、29連勝という将棋連盟における連勝新記録を14才で達成したことは驚くべきことで、私もこれほどまでの逸材とは思っていませんでした。今回、竜王戦の決勝トーナメントで、佐々木勇気六段に敗れたのですが、連勝記録はどこかで途切れるものの竜王戦だけは勝ち進んでいくのをひそかに期待していました。というのも、プロ棋士の昇段というのは、基本的にはリーグ戦である(名人戦の挑戦者決定戦である)順位戦での昇格によるもの、例えば、藤井四段は現在C級2組にいますので、そこで勝ち抜けC級1組に昇格することで五段になるというものですが、このリーグ戦は1年近くかけて戦い抜くので、昇格・昇段しうるのは早くても来年の3月ということになります。しかしながら、竜王戦というのは、新聞社が金の力に物を言わせて創設したタイトル戦で形式的には名人戦と同格となっており、昇段に関しても特別な配慮がなされています。その昇段規定の中でも驚くべきは、竜王のタイトルを取ることにより、四段からでもいきなり八段になれることです。竜王のタイトルが取れなくても、挑戦しただけで七段に昇段するのです。他のタイトル戦では、せいぜいタイトル獲得して一つ昇段するというに過ぎません。藤井四段が決勝トーナメントを勝ち抜いて、七段か八段にいきなり昇段したら、前代未聞の事件として将棋の世界に衝撃を与えることだったのにと残念に思う次第です。

 さて、藤井四段の強さについては、色々な分析がありますが、多くの意見は、序盤・中盤の手堅いが斬新な要素も含む構成力、終盤の圧倒的な詰めであると言われています。終盤力については、プロ棋士も参加する詰将棋選手権で3連覇していることからも、以前から評価が高かったところですが、序盤・中盤の構成力については、最近とみに力が付いてきたとプロ棋士の間でも評判です。そこでの噂では、どうやら藤井四段は将棋のAIソフトを活用してトレーニングを積んでいるのではないかということです。今年に入ってから、佐藤天彦名人が将棋AIソフト「ポナンザ」と対戦して連敗してしまったという話題がありました。このことは、将棋界においてはマイルストーンとなるべき事件であったと言われています。すなわち、(先ほどの竜王が名人と同格という議論はともかく)人間界のトップ棋士である佐藤天彦名人が連敗したことで、将棋AIソフトと人間のどちらが強いかという議論にけりがついたということです。これからも“ナノ”速度で進歩していく将棋AIソフトに人間が勝つということはもうできないと言っていいのでしょう。また、この佐藤天彦VSポナンザの戦いでは、ポナンザの指した初手が注目を浴びました。第1局で、普通の“人間”であれば、7六歩か、3四歩で始めるところ、ポナンザは初手でいきなり3八金という手を指したのです。こんな手は将棋が何年前から指されていたか知りませんが、多分誰も指したことがない前代未聞の“とんでもない”手なのです。全く人知を超えるレベルにAIが達したと評価する人もいます。藤井四段は、そのような前代未聞の手を指すようなAIソフト相手にトレーニングを積んだことで、序盤・中盤に独創性を持ちかつ堅実な展開をすることができ、そのような展開に慣れない先輩棋士たちがどんどん破れたのではないかというのです。
 藤井四段は、幼少からの詰将棋といういわばアナログなトレーニングよる終盤力を磨いた上で、デジタルな将棋AIソフトとの共存を果たし、序盤・中盤力をも獲得していったのではないでしょうか。藤井四段の30連勝にストップをかけたのは、佐々木勇気六段で、その後の棋戦において三枚堂達也四段に敗れましたが、お分かりのように二人とも四段、六段(佐々木六段は、藤井四段との対局後に五段から六段に昇段)という若い世代であり、当然将棋AIソフトで腕を磨いている棋士たちであり、AIソフトで鍛えた藤井四段を倒したのも、やはり将棋AIソフトで鍛えられた若い棋士だったと言えるかと思います。
 このように将棋の世界では、AIの優位が確立された状況にありますが、それでは、仕事や業種に関してはどうでしょうか。来月のコラムで考えてみようと思います。
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