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東芝の崩壊の危機

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[東芝の崩壊の危機]2017.4.1

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 東芝が経営危機に苦しんでいるどころか、大げさでなく崩壊もしくは消滅の危機に直面しています。平成27年に端を発した同社の粉飾決算問題は、結果的に同社の自己資本比率を大幅に低下させ、自ら経営の自由度を大きく縮めてしまいました。そのために、色々な事業部門を切り売りせざるを得ない状況になったのですが、それに追い打ちをかけるように出てきたのがウスティングハウス(WH)問題です。

 東芝は、平成17年にWHを54億ドルもの巨額の買収価格で手に入れましたが、当時から、そんなにWHに価値があるのかと言われていました。何よりも問題なのは、東芝がWHの経営をコントロールできなかったことでしょう。幾ら暖簾代を高く評価して購入したとしても、それ以上に事業価値を高めれば安い買い物だったと言えるのですが、東芝はどうやらWHの経営陣の言いなりに経営させていたようです。それが、2015年10月に、原発建設会社のCB&Iストーンアンドウェブスター社(S&W社)を事実上ゼロ円(ゼロドル?)で買収したことに顕れています。S&W社は当時既に実質的に債務超過だったのではないかと疑われるのですが、S&W社がジョージア州とサウスカロライナ州で受注している工事が竣工すれば200億ドル相当の請負代金が入ってくるからというWHの説明を東芝経営陣は鵜呑みにして、多分WHの買収前精査(D/D)もおざなりにやっていたことを容認していたのでしょう。ところが、WHがS&W社買収後に同社に乗り込んでみると、本来あるべき運転資本がなく、また原発工事のコストについても甘々の想定をしていたようで200億ドルの請負代金が入ってきてもコストの方がザルで、両案件においては逆に70億ドル相当の損失が生じることが分かってきたのです。

 この場に及んで東芝は、WHを東芝本体から切り離そうと画策してのWH株式を売却しようと目論んでいますが、ふたを開けていないパンドラの箱付で誰が同社の株式を買うでしょうか。そのあたりは、シャープを買収したホンハイのようなホワイトナイトが出てくる可能性は低いのではないでしょうか。株式売却が難しいというのであればということで、東芝はWHを連邦破産法第11条申請、すなわち日本流にいえば民事再生法の申請を考えているようです。確かに、WH自体の負債をチャプター11である程度圧縮してしまえば、WH自体は“きれいな”会社になるかもしれませんが、問題は、どうしてそうなったのか経緯は知りませんが、東芝自身が、WHの債務について8000億円の限度で連帯保証しているということです。
 ということは、WHがチャプター11を申請した瞬間に、東芝が負っている連帯保証債務が顕在化し、金額も確定してしまいます。下手すると連帯保証額8000億円マックスまで行くかもしれません。そうしますと、東芝本体は債務超過が確定し、事実上の倒産ということになりましょう。しかしそれでも、WHが将来的に負う潜在的、偶発的な債務は解決されるわけではありません。まさに泥沼ですが、追い打ちをかけるように、米連邦政府がWHに対して83億ドルの債務保証をしているという事実も出てきました。そうしますと、現在の米国大統領の性格からすれば、「日本の会社の尻拭いに、アメリカ国民の血税を使うわけにはいかない!」ということで、晋三さんをまた呼びつけて「何とかしろ!」ということになりますから、米国の原発の問題を日本国民の血税で尻拭いさせられるかもしれないのです。全く以て今後東芝はどうなっていくのか、あまりにも利害関係者が多すぎて、どうなるのか誰も現時点で予想できないでしょう。

 ということで、何故このような事態になってしまったのかを考えてみたいと思います。一言でマクロ的にいえば、日本企業は海外M&Aを成功裏に行うだけの実力が無く、従いグローバル企業になれないということでしょうか。東芝は、原発事業について、日本企業にありがちな横並び意識からか、日立がGEと組むから、三菱重工がアレバと連携するからということで焦ってしまい、良く考えずにWHという会社がどのような会社であるかもわからないままWHを組んでしまったということが地獄への入り口だったのかもしれません。
 漏れ聞こえてくる話だと、WHのCEOは人から指図されるのが嫌だからという理由で、東芝の経営陣もなにも“指図”できなかったということで何をかいわんやです。本当にWHを経営できる自信があったならば、そのようなわがままをいう現経営陣は切ることができたはずです。本当に信じて任せることと、放任することは全く違うのではないでしょうか。東芝に限らず、一番の問題点は語学力なのか、海外で買収した会社の経営というのが日本の会社は苦手であり、かといって語学ができる外資系を渡り歩く“プロ経営者”に任せるということも、LIXILのグローエ買収でうまくいかなかった事例からすると、そちらも必ずしもうまくいかないということで、一朝一夕に海外M&Aをうまくできるようにはならないのでしょうか。

 さて今後の東芝の行く末ですが、このままではWHを含む原子力事業で地獄まで行ってしまうことは火を見るより明らかですから、半導体事業を含め原子力事業を除くすべての事業部門を外部に売却してしまい、東芝のDNAだけは残すという選択肢しかないのではないかと思います。残った原子力事業については、スポンサーもつかない、自力再生もできないというのであれば、もはや破産手続という清算をするしかないのかもしれません。会社としてのまとまりが残ったシャープよりも悲惨な末路が待っているように思えます。
 (平成29年3月14日時点の執筆になります。)
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