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熊本地震の被災マンション法律相談

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[熊本地震の被災マンション法律相談]2016.8.1

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 6月後半に、熊本弁護士会において、被災マンションについての法律相談を担当してきました。今回の熊本地震では、テレビなどでよく報道された益城町の住宅などの倒壊被害も甚大でしたが、熊本市内のマンションにおいても相当な被害が生じ、熊本弁護士会には、相当数の相談が寄せられているようですが、熊本弁護士会としても対応体制が地震後のことで整わず、全国の弁護士会に応援を頼んでいるのとのことです。私も、東京弁護士会において、住宅紛争審査会(住宅の建築請負契約などの建築瑕疵事件の相談などに応じる組織です。)に登録している関係で、いわば助っ人として法律相談の担当者として出張したものです。

 ここのところの熊本地方の大雨のため、羽田を出発した飛行機はなかなか阿蘇熊本空港に着陸することができず、乱気流の中空港上空で30分も待機し、相当気分が悪くなったところでようやく着陸できたのですが、今度はあまりの大雨のため地上のスタッフが作業できず、これまた30分ほど待たされて、ようやく熊本の地を踏むことができました。
 早速市内に向かうバスに乗り込みましたが、空港から市内へ向かう道路沿いの建物には全然被害など見られません。ご承知の人もおられるでしょうが、阿蘇熊本空港というのは、今回被害甚大でよくテレビで報道されていた益城町にあるのです。訝しく思いながら、熊本で一番の繁華街である通町で降りまして、タクシーに乗り換え熊本城の北にある裁判所(裁判所内に熊本弁護士会もあります。)に向かいましたが、熊本城は、天守閣はシャチほこが落ち、瓦もほとんどなく、虎退治の加藤清正が築城した城が何か、猫のような風情をたたずませていました。また、各櫓の石垣も多くが崩壊寸前で、テレビの報道で見るよりも(不謹慎な言い方ですが)迫力ある崩れ方をしていました。今回の地震のほんの数週間前にNHKの番組「ブラタモリ」で映っていた熊本城の威厳が全く消えていたのには驚きです。

 さて、本業の被災マンションの法律相談ですが、今回2件、建築士の先生と担当しました。1件目のマンションは、応急危険度判定では「危険(赤)」、罹災証明では「大規模半壊」と認定されており、相談に来られた管理組合の方々の意向も、修復してももう居住するのは難しいのではないかという感触でした。建築士の先生のアドバイスは、まずは建築士に構造上修復が不可能であることを査定してもらい、その上で、再築する場合の費用などの見積を取っていくことが肝要であるとのことでした。私からは、修復不可ということが確定すれば、今回まだ「被災マンション法」上の政令災害指定はされていませんが、政令指定されることとなれば同法に基づき、区分所有者数、議決権数の5分の4以上の賛成で以て、現在の被災建物を取り壊して建物を再築することも、再築せず敷地を売却することも可能であることを説明しました。政令指定されない場合でも、(近時改正された)建替えマンション法に基づき、同様に敷地売却も可能であることを説明しました。ご相談にいらっしゃった管理組合の方々も、修復不可と確定されれば熊本市(熊本県?どちらか)が、取り壊し費用を全額補助するとのことなので、敷地売却することがベストではないかという感触を持っておられました。ただ、区分所有者数、議決権数の5分の4以上の賛成を取り付けるのは、色々な意見の人がいるので相当高いハードルであるということも言っておられました。
 2件目の被災マンションは、応急危険度判定では「危険(赤)」、罹災証明では「全壊」と認定されていました。相談に来られた区分所有者の方々が言われるには、一部区分所有者の知り合いの工務店の建築士に相談したところ、修繕すれば居住することができるというので、悩んでいるとのことでした。私としては、幾ら応急的な判定とはいえ「全壊」ということなので、そんな簡単に“修繕すれば住めますよ”というのは、修復しても当該マンションは旧耐震基準の建物であり、耐震性まで確保できる修繕まではできないでしょうから、無責任な発言ではないかと思いましたが、建築士の先生からも、まずは“信頼できる”建築士の方に、修復可能か不可能かをきちんと診断してもらい、万が一修復可能であっても修復費用と建て替え費用との比較をして、区分所有者らの判断に資するべきであるというアドバイスがなされました。私からは、大規模復旧となると、区分所有者数、議決権数の4分の3以上の賛成が必要であるという説明をしましたが、当該マンションにおいても区分所有者が復旧派と建替え(もしくは敷地売却)派に真っ二つに分かれており、いずれの方向においても意思形成が難しいという感じでした。

 2件の相談が終了し、阿蘇熊本空港まで戻るということでタクシーに乗り込みましたが、どうも空港から市内までの状況が腑に落ちず、運転手さんに尋ねたところ、新道の方は沿道建物も新しく大きいのでさほどの被害はないが、やはり旧道の周辺はテレビで報道された様子そのままということで、旧道を経由して空港に行きましょうということで、水前寺公園、健軍神社から益城町に入るルートで行ってもらうこととなりました。旧道も熊本市内に入るまでは、せいぜいガラスが割れた建物が散見される程度でしたが、益城町に入ったとたん、道路沿いの建物がぐしゃっとつぶれているのがどんどん出てきまして、最近の建物はさほどでもないのですが、瓦が重そうな古い建物は自重で押しつぶされたというのがありありでした。それが延々数キロ続き、ようやく空港に抜ける道で曲がることになったのですが、川沿いの道で河岸段丘上にある建物が今にも川に落ちそうに傾いていました。私は、東日本大震災後に、仙台の海沿いの地域を車で回った経験がありますが、津波で全く何もない状況で荒れ野原となっていましたので、ビジュアル的なインパクトは今回の方が大きいと思った次第です。地震の大変さを目の当たりにして空港に到着し、東京便を待つ間食事をしようと思いましたが、空港3階のレストラン街はまだ復旧しておらず、結局バスなどの発着レーン横の仮設店舗で食事して早々に帰途につきました。本当に被害にあわれた熊本の皆様にはお見舞い申し上げる次第です。
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