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執行官の命がけの職務

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[執行官の命がけの職務]2026.3.1

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 今年に入り、1月15日、東京都杉並区の路上でアパート立退きの強制執行の手続に訪れた東京地裁の執行官ら2人が刺され1人が死亡した事件が起こりました。亡くなったのは、建物賃料の保証会社社員の方(61)で、その方は背中に1カ所の傷があったとのことです。また、60代の男性執行官は胸など4か所を刺されたとのことですが命は助かったというものです。犯人は昨年7月時点でアパートの家賃約40万円を滞納しており、「自暴自棄になった」「新型コロナウイルス禍以降、仕事をしていなかった」「たまたま目に入った2人を刺した」と供述しているとのことです。

 そもそも強制執行というのは、このケースのように家賃を相当期間滞納した賃借人に対して、賃貸人である大家さんが建物明渡訴訟を提起し、明渡認容判決を取得して、その判決に基づいて、滞納した賃借人を建物から退去させることを言います。
 実際の強制執行は、執行官を筆頭に、執行補助者としての執行業者、鍵開錠業者、立会人、債権者代理人を引き連れて現場に向かいます。執行官というのは、裁判所の執行官室に所属する国家公務員で、元裁判所書記官だったという経歴の方が多く、余談ですが執行官給与は案件ごとの歩合制とのことです。執行官が、判決で確定した権利関係を国家権力を用いて実現させるという役割を果たすのです。
 その権利実現を手助けするものとして執行補助者という人々がいますが、民間の人で執行業者は実際に家具などを建物から搬出させるといういわば引越屋さんであり、鍵開錠業者というのは、ロックされた建物に入るために鍵を開けるという役割をする人です。また、立会人というのは、執行官の権利実現行為について、いわばお目付け役として現場に臨場する役割の人です。そして、強制執行を申し立てた人を債権者といい(強制執行を受ける人を債務者といいます。)、強制執行には債権者の代理人が立ち会わなければならないのですが、弁護士が関与しておれば弁護士が債権者代理人として立ち会い、関与していないような場合は、債権者が会社であれば従業員の人が債権者代理人として立ち会うことになります。

 実際の強制執行は、いきなり執行官が現場に行って、債務者たる賃借人をたたき出すということはせず、1回目の訪問時はあくまで「任意で出ていかれたらどうですか」という催告執行といいますがソフトに行い、2回目の訪問までに任意に出ていかない場合は、断行執行といいますが、建物の中の家具荷物もすべて外に出して、民事執行法に従い処分してしまうことになります。今回の執行官の訪問は、犯人がガスコンロを爆発させるなど抵抗する準備をしていたようなので、1回目の催告執行ではなく、2回目の断行執行だったと思われます。犯人に刺されてしまったのは、執行官自身と、債権者代理人である賃料保証会社の社員の人ということになります。私の経験でも、建物明渡執行の際、債務者である賃借人の高齢の方から植木ばさみを投げつけられたということがありました。幸いにも私の前で落ちましたので、人的被害はなかったのですが、追い詰められた賃借人は何をしでかすかわかりませんので、気を抜くことができません。
 また、暴力的な抵抗をされたわけではありませんが、あるマンションの強制執行の例では、鍵開錠業者に鍵を開けてもらい中に入ると、賃借人は夜逃げしているはずなのに部屋の真ん中に上半身裸で、何か絵が描いてある背中をこちらに向けて寝ている男が寝ており、執行官が「あなたは何者?」と聞くと、その男は、「賃借人から転貸を受けて部屋を管理している者だ」ということで占有関係が複雑になり、ようやく最終的には出て行ってもらったという案件もありました。

 執行官に対する業務妨害が今後どうなるかですが、執行官室では、執行官に警察官がしているような防護チョッキを着させるかとか、民間の警備会社の警備員を必ず同行させるとか(その場合の費用は、債権者持ちとなるのでしょうが)検討しているということも耳にしました。債権者代理人で同行する機会のある私も防護チョッキを買うかどうか検討しています。
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