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[令和の米騒動]2025.7.1

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 現在、コメの店頭価格は、銘柄米だと5,000円近くして、1、2年前の2倍近くまで値上がりしており、コメ離れが進んだとはいえ主食の高騰は一般家庭の生活を圧迫しているもので「令和の米騒動」とも言われています。米騒動と言えば、1918年の米騒動が有名です。第一次世界大戦による好景気で物価が上昇し、特に米の価格が急騰しました。これは、米の消費量が増加した一方で、工業化による都市への人口流出で米の生産量が伸び悩んでいたこと、さらに政府のシベリア出兵の方針を受け、米商人が軍隊への供給を見越して米を買い占めたことなどが原因と言われています。1918年7月、富山県魚津の漁村の主婦たちが米の県外移出に反対し、米の安売りを求めて集まったことが米騒動の始まりとされています。この動きが新聞で報じられると、米価高騰に苦しむ全国各地の民衆に波及し、都市部を中心に大規模な暴動へと発展しました。米屋や富豪の打ちこわしなどが頻発し、その規模は1道3府38県に広がり、直接参加者は70万人を超えたとされています。政府は警察だけでなく軍隊を出動させて騒動を鎮圧しました。その結果、2万5千人以上が検挙され、8千人以上が刑事処分を受けました。この騒動の責任をとって、当時の寺内正毅内閣は総辞職に追い込まれ、初の本格的な政党内閣である原敬内閣が誕生しました。米騒動は、自然発生的な民衆の蜂起としては近代日本で初めての大規模な大衆闘争であり、その後の大衆運動発展のきっかけとなったといわれています。

 では、今回の米騒動に至った歴史的経緯はどうなのかを整理してみます。戦後、食料増産が推進され、1960年代には米の自給が達成されるまでに生産量が増大しました。しかし、同時に食生活の変化により米の消費量が減少し、米の過剰生産が問題となりました。コメの過剰を解消するため、1970年代から「減反政策」(生産調整)が導入され、稲作農家に作付面積の削減を義務付けるようになりました。これは米価の維持と供給量の調整を目的としたものでした。1995年には、食管制度が廃止され、米の流通は自由化されました。その後、市場原理を導入しつつ、価格安定対策や経営所得安定対策など、様々な米政策改革が進められました。しかし、国内では市場原理を導入するも、食料自給率の向上と国内農業の保護を目的として、海外からのコメの輸入に対しては閉鎖的な態度を取っています。この日本政府の閉鎖的態度に対し、海外からの批判が強まり、ウルグアイ・ラウンド合意(1993年)の結果として、「ミニマム・アクセス」と呼ばれる制度を導入しました。これは、国内の需要に関わらず、一定量のコメを毎年必ず輸入する義務を負うものです。これにより、農業市場を国際的に開放し、他国のコメ生産者にも市場へのアクセスを保証するとしたのですが、現状: 輸入されたミニマム・アクセス米のほとんどは、国内の食用米市場には流通せず、飼料用や加工用として供給されたり、政府が備蓄米として保管しています。これは、安価な外国産米が国内のコメ価格に影響を与え、農家経営を圧迫することを避けるためです。そして、ミニマム・アクセス分を超えてコメを輸入する場合には、非常に高い関税が課しています。一般的に輸入されるコメには778%という高関税が課されるため、実質的に食用目的での自由な輸入は非常に困難な状況です。その結果、日本のコメ市場は国際競争からは保護されていますが、国際価格に比べて国内のコメ価格が高く維持される傾向にあります。

 今回の令和の米騒動は、一部のマスコミ報道によりますと、2024年の国内のコメの収穫が不作だったこともあり、JA経由で流通するコメ以外に、スポット市場で売り買いされるスポット米と言われる商品があり、それが供給量減少により高騰したため、小売市場で販売される銘柄米の価格が高騰した、また、(このあたりは推測もありますが)、JAもスポット市場による価格高騰を”容認”して、結果、店頭に並ぶ銘柄米はすべて高値となったというものです。確かにコメの生産原価も諸物価高騰の折に上昇したとしても、ここ1、2年で小売価格が倍近くなるのは異常と言えましょう。小売価格の鎮静化を図るために、小泉進次郎農水相が政府備蓄米をJAルートを通さずに随意契約で直接スーパーなどに売却したのは、スポット市場価格が下がりだしていることからも効果のある施策ではなかったかと思われます。小泉農水相は、2025年産米が市場に出てくるまで備蓄米の売却を続ける意向ですが、備蓄米がそれまでに尽きてしまえば、ミニマム・アクセス米として緊急輸入して市場に投入すると考えていますが、これも備蓄米投入が尽きた後にまた市場価格が高騰するようでは随意契約して売却した意味がなくなってしまうので、やむを得ない施策かと思われる次第です。

 なによりも、今回の令和の米騒動がどのような形で終結したとしても、政府の減反政策による生産量調整および米価の維持と、本来自由に取引され価格も自由に決定されるべき市場原理とが互いに矛盾して、共産主義国家のように国家が介入するというのはもはや破綻していると言わざるを得ません。減反政策を撤廃し、生産の自由化も図ることが必要ではないかと思う次第です。また、今回の様にJAが本当に価格操作とまではいいませんが、高価格安定を容認していたというのであれば、やはりJAの改革も必要になってくると思われます。
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