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[第三者委員会の活用]2025.5.1

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 この度、株式会社フジ・メディア・ホールディングス及び株式会社フジテレビジョンが設置した、番組出演タレントと女性との間で生じた事案等の調査に関する「第三者委員会」が、調査報告書を提出しました。その結果内容は、報道で皆さんご承知のとおりですので、そもそも第三者委員会とは何かということを論じてみたいと思います。

 日本弁護士連合会が、2010年7月15日に、「『企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン』の策定にあたって」という指針を出しています。その序文を要約しますと、企業などの内部において不祥事が生じた場合、かつては内部で調査をする事が一般的でしたが、経営者自身による経営者のための内部調査では調査の客観性への疑念を払しょくできないので、最近では外部者を交えた委員会を設けて調査を依頼するというケースが増えてきました。この種の委員会には二つのタイプがあり、まず一つは「内部調査委員会型」です。「内部調査委員会型」というのは、企業がイニシアティブをとって行う内部調査に弁護士に参加を要請するもので、弁護士の参加により調査の制度・信頼性を高めようとするものです。しかしながら、参加する弁護士は全く利害関係のない外部の弁護士だったり、当該企業と顧問契約のある弁護士だったりとまちまちです。このタイプの委員会では、企業自身がイニシアティブをとったり、参加する弁護士が顧問弁護士だったりすることで問題が残るものと言えます。

 そこで、企業としてはすべての利害関係者に対する説明責任を果たすためにも、独立性の高いより説得力のある調査をする必要があることとなり、企業から独立した委員のみでもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策を提言するタイプの委員会として「第三者委員会型」が求められることとなりました。多くの場合、弁護士が専門家として第三者委員として参加することとなります。
 今回のフジの第三者委員会の委員長は、東京弁護士会所属の竹内朗弁護士ですが、経歴を見ると企業不祥事関連で経験のある弁護士なので、フジの経営者としては、第三者委員会を構成するには妥当と判断して白羽の矢を立てたものと思われます。(もしかすると、フジの経営者は、第三者委員会の人選からすべて弁護士会に委任したのかもしれませんが、調査報告書にはそのあたりの経緯が書かれていないので、フジの経営者が竹内弁護士を指名したという前提で話を進めます。)確かに今回の第三者委員会は相当踏み込んだ調査をして、公平公正の立場で調査をしたということは評価できるものと言えましょう。「内部調査委員会型」で調査が行われていたとすれば、ここまで経営陣に対して厳しい指摘などができなかったかもしれません。例えば、フジテレビの元アナウンサーである女性弁護士がおり、彼女はざっくばらんに物をいうタイプの人ではありますが、内部調査委員会型の委員となったとしたら、やはり元居た職場に対する“忖度”が働いた可能性は否定できないのではないでしょうか。

 しかしながら、更に今後の同様の問題が起きた場合での第三者委員会の調査をより公平公正な実のあるものにするために提言をさせて頂くとすれば、今回、フジの経営陣が竹内弁護士を名指しして委員長としたのであれば、やはりその指名過程で何らかの情実が入る余地が全くないとまでは言えないのではないでしょうか。また、委員会のメンバーにつきましては、調査報告書から読み取りますと、竹内弁護士の所属する事務所の弁護士たちや、竹内弁護士が独立する前の事務所に所属する弁護士らで構成されており、そのあたり力関係で委員長に直言できない可能性もないとは言えません。やはり、第三者委員会の委員長となるべき者が企業との間で何ら利害関係もないことは当然、委員同士においても公平公正な立場が確保できる必要があるのでないでしょうか。

 そこで、第一東京弁護士会のホームページを見ておりましたら、「第三者委員会委員候補者」というページを見つけました。第一東京弁護士会として、企業が第三者委員会を設置する場合には、同会の作成した第三者委員会講署名後の中から候補者を推薦するというものです。これであれば、企業と委員長との間の利害関係を疑われることなく、また委員同士も同じ事務所内の上下関係などというものから解放された自由な立場での調査業務を遂行できるのではないでしょうか。他の弁護士会でも弁護士紹介センターなどに相談すれば、直ぐに適切なメンバーを紹介してくれるものと思いますので、今後は何か不祥事が起きたら、先ず弁護士会に相談して企業と利害関係のない弁護士を委員として紹介して、第三者委員会を設置することをデフォルトにすべきではないかと思います。具体的には、企業においては、定款の下部規範として「第三者委員会規程」を設けるべきでしょうし、自治体では第三者委員会設置に係る条例を制定すべきかと思われる時代です。
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