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中居君のトラブルと守秘義務

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[中居君のトラブルと守秘義務]2025.2.1

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 元SМAPの中居正広氏についてのトラブルが話題となっています。ピンズバニュース1月6日の記事を抜粋させて頂くと、
 「中居と女性のスキャンダルを最初に報じたのは、2024年12月19日発売の女性週刊誌『女性セブン』(小学館)。
 “密室のトラブル”が起こったのは2023年にあった会食の席でのことだったといい、当初、会食は中居ともう1人の男性、女性で行なわれる予定だったが、男性が急遽来られなくなり、中居と女性の2人だけに。その後、密室内の2人の間に《深刻な問題が発生し、トラブルに発展した》とされる。
 その後、中居と女性側の間で代理人を立てた話し合いが持たれ、中居が実に9000万円という額の解決金を支払ったという。
 中居の所属事務所は代理人弁護士を通じて《以前に双方の話し合いにより、解決しておりますことをご理解ください。お互いに守秘義務がありますので、対外的にお答えすることはありません》と回答し、トラブルがあったことは否定していない。
 解決したはずの問題だったが、記事として明るみに出たことで中居のイメージは大幅にダウン。中居はソフトバンクのCМシリーズに出演していたが、昨年末から彼が出演するCМ動画が公式サイトから削除され、同社ホームページ上の画像も一部を除いては他のものに切り替わっている。」とのことです。

 解決金が9000万円というほぼ1億円の解決金を支払ったということで、相当の“深刻な問題が発生した”のでしょうね。その辺りは下世話な話ですので深く突っ込みませんが、問題は、9000万円を支払うという示談が成立したときに示談書(名称は、和解契約書でも構わないのですが)を作成しているはずです。弁護士が関与しているのであれば、秘密保持義務条項を入れているはずなので、何故、密室での事件があったことや、解決金として9000万円も払ったことが外部に漏れ、女性セブンがその情報を入手して、公に“ばらして”しまったのでしょう。よもや、中居君側から公にするメリットは何もないので、可能性があるとすれば、被害者の(女性自身ではないとしても)女性側からだと思われます。中居君としては、示談書の内容が漏洩したことにより、テレビ番組の出演や、CМの出演がバンバンと切られてしまい、数億円の損失が発生してしまっていると思われます。すると、通常であれば、示談書の秘密保持義務条項を入れる際は、義務違反、すなわち漏洩したら損害賠償するという条項を必ず入れますので、本当に女性側が漏洩していたとすれば、中居君は数億円の損失を女性側に請求することができます。

 しかしながら、ここで問題となるのは、中居君として損害賠償請求をするには、“本当に”女性側が示談書の内容を漏洩したかを立証する必要があります。女性セブンについても、ニュースソース秘匿の原則から誰から聞いたかは言わないでしょうし、なかなか漏洩ルートの探索は難しいかと思います。よもや、被害者の代理人弁護士が漏洩したとしたら、弁護士会の懲戒処分で業務停止にもなりかねないので、まずはやらないでしょう。とすると、訴訟提起の相手方としては、被害者の女性本人しかないということで決め打ちする可能性はありますね。

 次に問題になるのは、損害賠償の額です。上述したように、中居君としては数億円の損害が出ているでしょうが、果たして、裁判になった場合、情報漏洩としての損害賠償でそれだけの額を認容するかは疑問です。いいところ、数百万円ではないでしょうか。そこで、注意深い弁護士が示談書を作成する場合、秘密保持条項違反があった場合の損害賠償金を予め●万円と決めておくことをします。これを損害賠償額の予定条項といいますが、今回の示談書の中にそのような記載があったかどうか。

 また、中居君側の弁護士もわきが甘いと思うのは、記事では「中居の所属事務所は代理人弁護士を通じて《以前に双方の話し合いにより、解決しておりますことをご理解ください。お互いに守秘義務がありますので、対外的にお答えすることはありません》と回答し、トラブルがあったことは否定していない。」とのことですが、通常、示談書の秘密保持条項では、「本和解の存在自体、及び示談の内容については、開示してはならない。」と入れるはずなので、べらべらと被害者女性との間に紛争があったこと自体を話すことや、解決していますなんてことを話すこと自体、秘密保持条項違反だと思うのですが。まあ、中居君側の弁護士なので、文句を言っても仕方ないですが、わきが甘いですね。私ならば、「被害者女性と称する方との間で紛争があったかどうかもお話することはありません。」というべきですね。そう言っておけば、テレビ会社やCМ企業から契約を切られることはなかったかもしれません。

 いずれにしても、松本人志の件といい、吉沢亮の件といい、不祥事を起こすと一発でCМも番組も下ろされてしまうという芸能界もコンプライアンスが厳しい時代になったということでしょうか。もう、昔の勝新太郎などは許されない時代だということでしょうか。
(令和7年1月9日執筆)
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