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調停委員となって1年

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[調停委員となって1年]2023.4.1

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 昨年4月に簡易裁判所の民事調停委員に就任して1年が経ちました。裁判所においては訴訟手続とは別に民事調停手続というものがあり、民事調停手続というのは、調停主任(裁判官又は民事調停官)1人と調停委員2人からなる調停委員会が、当事者の言い分を聞き、必要があれば、事実を調査した上で、法律的な判断を基本におきながら、紛争の実情に応じて当事者を説得し、お互いの主張に歩み寄りを求め合意に導き、条理にかない、実情に即した解決を図るという手続です。調停委員は、弁護士等から選ばれる専門家調停委員と、経験豊かな一般人から選ばれる一般調停委員があり、私は専門家調停委員として任命されているものです。

 大体月に2件から3件の調停事件の配点があり、東京では墨田区の東京簡易裁判所において調停手続が進められます。調停委員に任命された際の案件についての希望聴取があり、私は「不動産分野」としたものですから、不動産関係の案件を中心に事件の配点がなされているようです。調停委員は民事調停法で職務上で知りえた情報についての秘密保持義務があり、これに違反すると刑罰が科されることになりますので、具体的な案件についてお話しすることができませんが、一般論として、今までに担当した事案の多くは、借地借家法32条1項の建物賃料増額の調停申立事件が多いですね。これは何故かというと、借地借家法32条1項の建物賃料増減額手続は、訴訟を提起する前にまず調停手続を経る必要があるという調停前置主義がとられていますので、その要件を充たすためにも増額請求であれば賃貸人側から増額調停が申し立てられるためというものです。ですので、私が担当した事件でも、賃貸人の側から「あまりにも賃貸人と賃借人との間で言い分にギャップが大きいので、1回で調停不成立(不調)にしてください。」と言われたこともあります。それでも、結構調停手続で適正な賃料額、すなわち賃料増額を話し合いで決まったということがあり、やはり調停委員という第三者が介入しての話し合いはそれなりに効果があるのだと思った次第です。言い忘れましたが、賃料増減額朝廷であれば、調停委員は一人は弁護士ですが、もう一人は不動産鑑定士が入ります。従い、鑑定士調停委員が調停手続の中で、簡易な査定をしてその数字で賃貸人・賃借人が納得して合意が成立するというプロセスになるかと思います。

 また、扱った調停事件で多いのが、賃料不払いによる建物明渡請求の調停事件です。この類型については、賃借人側が出頭してくれれば、結構解決が図れるケースが多いと思われます。賃料不払いを被っている賃貸人側として、断固として賃借人に建物を明渡してほしいという強い意思があれば、そもそも調停を申し立てず、ストレートに明け渡し請求訴訟をするでしょうから、調停を申し立てたからには何とか賃借人にたまった分の賃料を支払ってもらい、賃貸借契約を継続したいという意思があるとおもいますので、結構賃貸借契約継続の方向で調停が成立するかと思います。ただし、今後の賃料延滞については、2回とか3回延滞したら、直ちに建物を明け渡すというような厳しい条項にはなるかと思いますが。

 但し、調停というのは訴訟と違い、相手方(訴訟で言えば被告)を強制的に出廷させることはできないので、そもそも相手方が出頭しなければ、調停手続が進められず初回で調停不成立(不調)ということになってしまいます。ですから、調停を申し立てるときには、相手方が果たして調停手続に乗ってくれるかの意思を確認しておくことが重要かと思います。何かの紛争で相手方と交渉を進めていたが、デッドロックに陥ってしまい、公平中立な第三者の意見を聞こうということで両者が調停手続に前向きであることを確認した上で、申し立てるのがよろしいかと思います。全然話し合いに乗ってこない相手方を朝廷に呼び出しても出頭する可能性は低いと思われます。

 最後に調停手続を利用するのに適していると思われる事案としては、申立人として訴訟をするには証拠が足りないというような場合でも、調停手続を進めてくれますので、私が扱った事案でも証拠が足りない事案でも調停が成立したものがありましたので、調停を活用する場面かと思います。そうは言いましても、事実認定で強い対立があるような事案ですと、調停手続における事実認定には限界がありますので、やはり訴訟の証拠手続で事実認定していかざるを得ないというのも、調停委員を務めていて感じることかと思います。
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