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甘々の国家公務員倫理規程

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[甘々の国家公務員倫理規程]2021.4.1

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 日本将棋連盟の公式棋戦の一つに銀河戦というのがあります。囲碁将棋チャンネルが主催しており、CS及びネットで配信されているといういわゆるテレビ棋戦です。羽生善治永世七冠が最多7回の優勝回数を誇りますが、2020年には、今話題の藤井聡太王位・棋聖が優勝したことでニュースにもなりました。この囲碁将棋チャンネルというのは、株式会社囲碁将棋チャンネルという衛星機関放送事業者が運営しており、同社は、株式会社東北新社が大株主となっています。東北新社というのは、秋田県出身の植村伴次郎氏が創業した、映画の製作・配給、海外テレビ映画の輸入配給・字幕吹替の翻訳、テレビ番組・CM制作、セールスプロモーション・イベント制作事業や、衛星放送事業などを行う日本の企業(総合映像プロダクション)とのことで、特に海外映画の吹き替え版制作で有名です。

 今回、東北新社が衛星放送の管轄省庁である総務省の官僚を接待したことで国家公務員倫理法に基づく倫理規程に抵触するという事件が勃発し、さらには、東北新社の社員として菅義偉首相の長男である菅正剛氏が総務省役員の接待の多くに同席していたということが明るみに出ました。また、総務官僚時代に“高額の”接待を受けていたということで、菅内閣の山田真貴子内閣広報官は辞任にまで追い込まれました。これだけに限らず、武田総務大臣の接待問題、NTTによる総務官僚の接待問題、東北新社の外資規制違反問題など、数々の問題に飛び火して菅内閣としても頭の痛いところです。

 それでは、国家公務員倫理法に基づく倫理規程というのはどのようなものなのでしょうか。まず、国家公務員倫理法については、「国家公務員が国民全体の奉仕者であって、その職務は国民から負託された公務であることに鑑み、国家公務員の職務に係る倫理の保持に資するため必要な措置を講ずることにより、職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、もって公務に対する国民の信頼を確保することを目的として制定された法律である。」との説明がありますが、要するに、収賄罪では相当の金品を受領しないとなかなか立件できないという検察の事情がありますが、それでは相当レベルに行かない程度の接待ではお構いなしということになり国民の信頼を確保することができないとい理由でできたのがこの法律です。どのような場合に国家公務員が処罰を受けるかについては、同法から政令に委任されて、国家公務員倫理規程により定められています。

 国家公務員倫理規程は、どのような行為を規制しているかというと、国家公務員が、許認可等の相手方、補助金等の交付を受ける者など、国家公務員の職務と利害関係を有する者(利害関係者)から金銭・物品の贈与や接待を受けたりすることなどを禁止しているほか、割り勘の場合でも利害関係者と共にゴルフや旅行などを行うことを禁止しています。まさに、衛星放送事業という総務省の許認可を必要する事業者である東北新社は「利害関係者」に該当し、同社から接待を受けることは禁止されていたのです。

 問題なのは、同規程に違反した場合の処分です。処分には懲戒と省庁内規の処分があり、懲戒の方が重く、免職・停職・減給・戒告の4種類があるのですが、今回総務省で東北新社からの高額接待を受けた官僚12人のうち11人が懲戒処分を受けたのですが、せいぜい減給どまりでした。果たしてこの程度の処分で、適切な放送行政が担保されるといっていいのでしょうか。減給処分を受けた高級総務官僚たちとしては、痛くもかゆくもないといったところではないでしょうか。総理大臣の長男からの接待ということで、より総務官僚としては、東北新社に対する許認可の判断について恣意的なものが入り込んでいたのではないでしょうか。そうだとすれば、減給処分といったお茶濁しの処分では、国民の納得が得られないのではないでしょうか。
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