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[TikTok問題]2020.9.1

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 動画投稿アプリ「TikTok」は、日本でも若者に人気のアプリです。しかしながら、同アプリが中国企業が運営していることを知っている人は多くないと思います。TikTokを運営しているのは、中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)の米国子会社であるティックトックです。バイトダンスは、2012年創業のれっきとした中国企業なのです。
 近時、米国の国家安全保障への影響を調査する米国政府機関である対米外国投資委員会(CFIUS)が、バイトダンスに対する調査を進めているとのニュースがありました。というのも、CFIUSは、TikTokが、2017年に同アプリを立ち上げたのち、同年11月に、同様の動画投稿アプリであった「ミュージカリー」を買収したうえで、2018年8月にTikTokとミュージカリーを統合し、利用者アカウントやデータを引き継いだという経緯を重視し、そのデータ移行のプロセスにおいて米国民の個人データが中国政府に流出されているのではないかという懸念から、国家安全保障上の問題として調査しているというものです。

 米国政府が何故にTikTokを問題視しているかというと、中国には、国家情報法という法律があるからです。同法の第1条では、「国の情報活動を強化及び保障し、国の安全と利益を守ることを目的とする。」とあり、中国という国家が行う情報活動は保証されなくてはならず、それが国益につながるというものです。そして、同法第7条においては、「国民と組織は、法に基づいて国の情報活動に協力し、国の情報活動の秘密を守らなければならず、国は、そのような国民及び組織を保護する。」と規定されています。すなわち、中国政府から、中国の安全と利益を守るために必要だから、TikTok登録者の個人データを提出しなさいという命令がなされた場合、同法によりTikTokとして中国政府の情報活動に協力する義務があるので、提出せざるを得ませんし、情報提出したことは、中国政府の情報活動の秘密ですからこれを公開することもできないということで、全くTikTok登録者のあずかり知らないところで、個人データが中国政府に筒抜けになってしまう可能性があるということです。

 そんな一個人のデータなど大したことないし、中国政府がそんな個人のデータなど必要としないのではという意見もあるかもしれませんが、これが何億人ものビッグデータとなった場合には、想像もできない情報価値が生まれてくることを看過してはいけないと思います。実際、国家情報法については、中国共産党の一党独裁体制の安定のため、法治の名の下で統制を強めるものであり、国内外の組織や個人に対する監視や情報収集の強化につながりかねないなどとして、懸念が示さています。中国政府・中国共産党が実際に、TikTokなどに情報提供をする恐れがあるということは、中国政府の香港民主派弾圧のために、国家安全法を香港に適用するための香港国家安全維持法を施行したことで十分に裏付けられるでしょう。「香港国家安全維持法」は、西欧民主国家では当然憲法上保障された表現の自由に基づく行為を犯罪とみなし、最高で無期懲役を科すとしています。香港域内において、中国政府の保安担当者が合法的に活動することも認めており、明らかに香港が中国に返還されたときに50年間は「一国二制度」を保証すると取り決めたことに違反しています。正直、これでもう香港においては自由な言論はできなくなったといえるでしょう。

 かようなことから、トランプ大統領が言い出したところにうさん臭さが残るものの、今回のTikTok問題というのは、意外と深刻な問題であり、例えばインドでは既にTikTok使用禁止令が出ているように、民主主義国家vs中国という図式において問題が続いていくかもしれません。
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