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新型コロナウィルスの政府対応

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[新型コロナウィルスの政府対応]2020.4.1

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 大型クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」というのは、つくづく呪われた船です。2002年10月1日に、三菱重工業長崎造船所内にて艤装工事中の「ダイヤモンドプリンセス」が火災を起こしたことは当時大きなニュースとなりました。幸い怪我人などは出なかったのですが、施主(船主)に対する納入期限が2003年7月に迫っており、このままでは引き渡しができないということで、急遽、同時に建造していた2番船である「サファイアプリンセス」を「ダイヤモンドプリンセス」として引き渡ししたというものです。火災を起こした「ダイヤモンドプリンセス」は焼損部分を完全に撤去し、名前を改めて「サファイアプリンセス」として引き渡されたというものですから、今回の新型コロナウイルス事件の「ダイヤモンドプリンセス」が火災を起こしたわけではありませんが、姉妹船の不幸を引き継いだ感があります。

 日本国内では、「ダイヤモンドプリンセス」の問題が一段落しましたら、国内での感染が本格化してきました。政府はイベントの自粛要請や、学校の臨時休校を打ち出しましたが、さらに3月13日、新型コロナウイルス対策特別措置法を成立させました。これ以上の感染拡大に対して、総理大臣が「緊急事態宣言」を行い、都道府県知事が外出の自粛や学校の休校などの要請や指示を行うことが可能となるというものです。総理大臣が「緊急事態宣言」を出す際には国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある場合と、全国的かつ急速なまん延により国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合の、2つの要件をいずれも満たす必要があると定められ、さらに、感染症の専門家でつくる「諮問委員会」に意見を聞くなどの手続きも必要となります。これを受けて対象地域の都道府県知事は住民に対し、生活の維持に必要な場合を除いて、外出の自粛をはじめ、感染の防止に必要な協力を要請できるようになります。また学校の休校や百貨店や映画館など多くの人が集まる施設の使用制限などの要請や指示を行えるほか、特に必要がある場合は、臨時の医療施設を整備するために、土地や建物を所有者の同意をえずに使用できるようになります。さらに緊急の場合、運送事業者に対し医薬品や医療機器の配送の要請や指示ができるほか、必要な場合は医薬品などの収用を行えます。

 しかし、外出の自粛を求めることは、憲法で認められた人権である行動の自由を制限することとなります。学校を休校することは、国民の教育を受ける権利を制限し、百貨店・映画館の営業の自由を制限することとなります。土地建物所有者の同意を取らない使用は、憲法で保障された財産権を侵害することとなります。運送業者も営業の自由を制限されることとなります。このように「緊急事態宣言」が出された際には、行政機関に強い権限が与えられるため、慎重な運用が必要となるわけです。特別措置法をめぐって、国会審議でも人権制限・侵害の恐れが指摘されました。国会の委員会で可決された付帯決議では、「国民の自由と権利の制限は必要最小限とすること」とされました。

 これらのニュースを見ていて、非常にうがった見方かもしれませんが、安倍首相が憲法改正において、9条の改正とともに、「緊急事態条項」の制定の前段階としての「緊急事態宣言」ではないかと思ってしまいます。すなわち、憲法の「緊急事態条項」というのは、昔でいう「戒厳令」です。他国からの侵略を受けた場合に発動するものであり、国民の自由な行動を制限するものであり、まさに今回の「緊急事態宣言」は、新型コロナウイルスに限定した戒厳令といえなくもないでしょう。もしかしたら、不謹慎ながら安倍首相は、一度この「緊急事態宣言」を発動して、いかに戒厳令的施行を行うのかの問題点の検討などを行いたいと思っているのかもしれません。今回の新型コロナウイルス騒ぎもそのような緊急事態にならずに収束することを祈るばかりです。
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