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最近の解決事例紹介(企業法務編)− 会社分割と関連手続のギャップ 2013.8.1

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 東京近県にある遊技場運営会社が、その所有する遊技場の土地建物、および遊技場の運営権を第三者に譲渡するということとなり、色々な経緯があって会社分割して譲渡するということとなりました。(会社分割する側を譲渡人と便宜的に言いますが、)譲渡対価については、当初の契約では、会社分割の決済時(クロージング時とも言いますが)に一括決済ということでしたが、譲受人の側でいろいろと調べたところ、会社分割の効力発生を証明する書面、すなわち会社分割による変更登記がなされた登記簿謄本ができてきてからしか、遊技場の土地建物の所有権移転登記(この場合は、会社分割を原因とする所有権移転登記になるわけですが)ができないということが分かってきた。通常、登記簿謄本が法務局で上がって来るのは申請から10日はかかるということですので、会社分割の決済時と土地建物の所有権移転登記の時期にギャップが出てくることとなります。
 そこで、譲受人から、決済条件につき、会社分割決済時100%の支払を、会社分割決済時に50%、不動産の所有権移転時に50%と分割してほしいとの申し入れがありました。しかし、譲渡人にしてみますと、半金しかもらっていない時点で、会社分割の効力が発生してしまうとなると、いかようにでも会社財産を処分されてしまうリスクができてしまう。他方、譲受人にしてみれば、決済時に全額支払をしているにもかかわらず、変更登記があがってくるまで移転登記ができないとなると、二重譲渡のリスクを負ってしまうことになる。そこで、私にどうしたものかと相談に来られた次第です。

 私もいろいろ考えましたが、会社分割の場合、遊技場の土地建物の所有権移転登記は、どうしても会社分割登記に先行しなければならないのは覆せない事実のようで、それを回避するアイデアがないかを考えましたところ、それならば、当該遊技場事業のM&Aについては。会社分割契約の1本だけではなく、土地建物についての不動産売買契約と、会社の運営権についての会社分割契約(この契約の対価の対象は、営業権、のれん代となりましょう)に分けてはどうかと提案しました。そうすれば、土地建物の所有権移転登記の登記原因は「売買」ですから、会社分割の完了に伴う登記を先行させなくても、二契約を同時に決済できますので、譲渡人側は決済時に100%の支払をうけることができますし、譲渡人にとっても会社分割から土地建物の所有権移転までの二重譲渡リスクを回避できるということで、両者ハッピーになります。ある意味、コロンブスの卵かもしれませんが、私的当事者間のM&Aの契約実務と、行政たる法務局の登記実務との間にギャップが生じることはありうることですので、契約当事者が何らかの工夫をしなければならないという事例の一つでした。

 もう一つ、私的当事者間の契約と、行政とのギャップが本会社分割事案にはありました。当該遊技場事業は許認可が必要な事業であり、監督官庁へ実質的オーナーチェンジの申請をしなければならないというものです。通常、会社法的には、会社分割ですから、“包括承継”であり、理論的には特段の同意や手続なしに権利義務が承継されるのですが、行政にとってみれば、それはあくまで“会社法”の世界の話で、許認可の世界では必ずしも通らないということです。案の定、本件においても、会社分割がなされても、監督官庁の許認可が必要ということとなり、これにつきましては、会社分割登記後、直ちに申請をするが、行政の許可が下りるまでは、会社分割をしても譲渡人の許認可がなくなるわけではないので、譲渡人の現場責任者が引き継ぎ業務を行うということで、行政との対応にギャップが出ないような配慮をして、スムーズに変更申請手続を進めるということで何とかクリアできました。
 ということで、M&Aの場合でも、会社分割などを利用したケースにおいては、イメージがわかない事案においても現実的な行政との対応などをよく確認することが重要であることを再確認した次第です。

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