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最近の解決事例紹介(企業法務編)− 売掛金の回収(転付命令の活用) 2014.1.1

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 当事務所の顧問先会社から、売掛金が回収できないという相談を受けました。製品をA社に販売したもののその代金約1000万円を支払ってくれない、そこで、顧問先も一生懸命売掛先と支払についての交渉を重ねましたが、相手方は言を左右にして埒が明かないということでしたので、当事務所から売掛先にコンタクトし、顧問先会社の代理人として支払交渉をいたしました。

 任意交渉の結果、売掛金を3回に分けて分割支払いしてもらうこととなりましたが、A社の支払を担保してもらうために、A社の代表取締役に売掛金の支払を連帯保証してもらい、かつ、公証役場で支払約束についての公正証書を作成してもらうこととしました。あわせ、顧問先会社の取締役からA社に、支払約束時点における取引先である未完成工事先を聞いてもらうこととしました。これが後で効いてくるのです。

 さて、A社の代表取締役にも公証役場に来てもらい、無事、債務弁済協定公正証書を作成してもらいました。公正証書作成において、忘れてはいけないのは、約束通りの支払いをしない場合は、債務者及び連帯保証人に対して、強制執行ができるという強制執行認諾約款を入れてもらうことです。すなわち、公正証書を作成することで、訴訟による確定判決を取得しなくても強制執行ができる「債務名義」を取得することができるのです。

 その後、公正証書に基づき、1回目の支払は何とか履行してもらいました。これで約300万円を回収しました。ところが、2回目以降の支払については督促したにもかかわらず、全然連絡も取れなくなりました。そこでやむなく、公正証書を使った強制執行を考えました。A社の場合、所有不動産もなく〈あったとしても担保がびっしりついていて余剰はないのが通常でしょうから〉、銀行預金か、売掛金くらいしか資産がないであろうと判断し、そこで、公正証書作成時に聞いておいた未完成工事がたぶん完成して請負報酬債権が発生していると考え、その請負報酬債権を差押えしました。たぶん、多くは既に工事発注者からA社に支払われているだろうと予想しましたところ、確かに残債権は約50万円しか残っていませんでした。それでも、50万円に差押えがかかりました。その差押前後に、A社の代理人と称する弁護士から、債務整理を進めたいという通知が来ました。しかしながら、破産をするとか、民事再生を行うとか具体的な方針が説明されていませんでしたので、折角差し押さえた債権に対する強制執行を続行することとしました。ここで考えたのは、かような代理人弁護士から債務整理の通知が言ったとすると、他の債権者も当事務所が差し押さえた請負代金債権に気づいて、競合して差押えをかけてくるのではないかということです。差押というのはいちばん最初に差し押さえた債権者が総取りできるというシステムではなく、差押が競合しますと、差押債権者同士で、債権額に応じて分配するということになってしまうのです。
 そこで、当事務所としては転付命令という手続をとることを決めました。転付命令というのは、民事執行法159条に規定があり、第1項で「執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、支払に代えて券面額で差し押さえられた金銭債権を差押債権者に転付する命令を発することができる。」と規定してあります。読んだだけではよくわからないかもしれませんが、要は、差し押さえた債権をお金として回収する前に、まずは差押えた債権そのものを差押債権者に移転することにより弁済したこととみなす、すなわち代物弁済のようなものです。この転付命令を受けることにより、差し押さえた債権は“独り占め”でき総取りできることになるのですが、リスクとしては、当該債権の債務者(請負代金を支払う発注者です。執行法上、差押債権者からみて「第三債務者」と言いますが。)が倒産などして無資産になってしまっても、代物弁済されてしまっていますから、とりっぱぐれになってしまうということです。本件では、第三債務者は、大手企業の関連会社でしたので、よもやとりっぱぐれはないだろうと判断し、他債権者の差押競合を避けるためにも一刻も早く転付命令を取るべく、直ちに転付命令の申立てをし、無事、決定をもらいました。おかげさまで、約50万円を回収できました。それでもまだ、約650万円ほど回収できずにいます。

 今回の債権回収における重要なポイントは、債務者との間で債務弁済協定を結ぶときは、債務者が会社であれば代表取締役なりに連帯保証してもらうこと、公証役場で強制執行認諾約款付(債務弁済協定)公正証書を作成すること、直近の債務者の売掛金債権〈取引先〉、銀行預金口座を確認しておくこと、倒産のリスクがあるときは転付命令も検討することです。
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