東京で不動産や法律相談に関する弁護士へのご相談は神田元経営法律事務所へ
神田元経営法律事務所 TEL:03-6418-8011
平日 9:00〜17:00
お問い合わせ

不動産関連業務

TOP > [不動産関連業務]不動産関連業務に関するご相談は神田元経営法律事務所へ

業務内容

神田元経営法律事務所
〒107-0062
東京都港区南青山5丁目11番14号
H&M南青山EAST301号室
地図はこちら

最近の解決事例紹介(不動産編)− 夜逃げテナントの明渡し 2013.3.1

シェア
 1月に入り懇意にしている中央区のビルオーナーから相談がありました。同ビル1階のテナントが夜逃げしたというのです。同テナントは、ビルの1階で店舗を開いていましたが、ある日突然、店舗に廃業通知の張り紙がなされ、社長とも全然連絡が取れなくなったというのです。その時点で、既に滞納家賃が2か月分積み重なり、3か月目を迎えるというところでした。オーナーが同店舗に伺ったところ、片付けの従業員がいましたが、社長の居所は口止めされていたのか教えてくれず、まだ残置されている動産類も結構あるようでした。

 オーナーとしては、テナントの社長は夜逃げしてしまったのであり、他の債権者もいるのでもはや戻って来ないであろうから、マスターキーもあることだしテナントの動産類を出して処分したいのだがという意向がありました。
 しかしながら、いくら賃借人が夜逃げしたといっても勝手に鍵を開けて、内部の動産類を処分してしまうことは自力救済になります。賃借人がひょっこり戻ってきて、いかに自分の占有が違法状態だったとしても動産類を勝手に処分されたことを知れば、必ずや損害賠償を請求してくることは火を見るより明らかです。絶対止めてくださいとお願いしました。
 オーナーが夜逃げテナントから預っている敷金は賃料の6か月分です。ということは、延滞賃料が3か月たまり、その上、原状回復費用などを考えると解決までの時間的余裕はありません。そこで、私からはオーナーに対し、直ちに建物明渡訴訟を提起することを提案しました。訴訟提起しても訴状が被告に送達され、第1回の弁論期日が指定されるのに最低でも1か月が必要です。通常被告が第1回の弁論期日に出廷しなければ、大体1週間後に欠席判決ということになりますが、それから明渡しの強制執行を申し立てとなり、強制執行も1回目は執行官も状況を見に行くだけということで、2回目に“明渡断行”ということになりますので、訴訟を提起してから実際の明渡しまで約2か月はかかることになります。また、執行申立費用、執行業者に支払う費用を考えると、オーナーとしては敷金で賄えない費用について、さらなる経済的負担が出てきます。オーナーも、私の説明に納得してくれたので、直ちに当事務所で訴状を作成しまして(幸いというか? 結構夜逃げ事件も多いので、訴状のひな型にも事欠きません。)、東京地裁に訴訟を提起しました。

 さて、心配していたのは、果たして訴状が被告に到達するかでした。当たり前ですが、訴状が被告に到達しないと訴訟が開始されません。もちろん、最悪は公示送達という手段で訴状が被告に到達したことを“擬制”するということもありますが、最後の手段です。そこで、訴訟を提起して配転部が決まった段階で、当事務所から書記官に綿密に連絡を取り、当該テナントの社長の住所に対しても訴状を送達するという手配を取りました。代表者の自宅住所は、会社の登記簿謄本に記載があります。祈るような気持ちで、訴状送達を待ちましたが、無事社長宅にも送達されたという連絡を受け、ほっとしました。その上で、第1回の弁論期日が指定されました。しかし、訴状が送達されたからと言っても、被告が弁論期日に出廷するとは限りません。訴状の受け取りは、本人でなくとも“受け取りに脇前のある人”であれば、家族でも送達完了となりますが、出廷は本人が必要です。ということで、弁論期日に欠席した場合に備えて、強制執行の段取りも進めていましたが、弁論期日の2日前に裁判所から、被告から答弁書が提出されているという連絡を受けました。

 答弁書を読みますと、当方の主張は認め、何とか和解で解決したいということが書いてありました。そこで、直ちに答弁書記載の社長の携帯に電話しました。最初は留守電になりましたが、すぐにコールバックがあり、オーナーにはお世話になったので何とかしたいということでしたので、それでは恩に報いるためには、2日後の弁論期日で和解を成立させて直ちに明け渡すことだとして、必ず弁論期日に出廷するようにお願いしました。その上で、直ちに和解案を作成し、裁判所にファックスしておきました。和解案は、本賃貸借を解約した上、建物を明け渡し、原状回復費用等を賃借人負担としつつ敷金が余れば返還するという内容でした。弁論期日に本当に被告が出廷するのかも祈るような気持ちで裁判所に行きましたが、社長は約束通り、鍵を持参して出廷し、無事和解が成立しました。
 ということで、2か月掛かるところを1か月で明渡しまで持っていくことができ、オーナーにも感謝して頂いたという事案です。とにかく、夜逃げ案件については、一刻も早く強制執行の債務名義を取るために、明渡訴訟を提起するということが確認できた事案でした。

シェア