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[STAP問題と宗論]2014.8.1

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 落語のネタに「宗論」という題目があります(この題目は、狂言にもあるようですね。)。アバウトな粗筋としては、大店の若旦那がキリスト教に凝ってしまい、店の仕事もおろそかにするので父である旦那が(この人は浄土真宗の信者です。)、若旦那に対してキリスト教がいかに間違っていて、いかに仏教が正しいかという口論、すなわち「宗論」を吹っ掛けるのですが、意見がかみ合わず、収拾がつきません。そこで、その店の飯炊き権助さんが両者の仲裁に入り、「旦那様、宗論はどちらが負けても釈迦の恥といいます。どうか若旦那を許してあげてください。」と説得したところ、旦那も納得して「いや、権助よく仲裁してくれた。そんなことを知っているお前も真宗(信州)か。」と聞いたら、「いいえ。仙台生まれだから奥州です。」というオチです。よくよく考えてみると、キリスト教対仏教の宗論ですから、“どちらが負けても釈迦の恥”とはならず、キリスト教が宗論に負ければイエスの恥となるのですが、まあそのあたりは落語の話ですので。

 それではいつ頃から「宗論はどちらが負けても釈迦の恥」と言われるようになったかというと、織田信長が審判となって、安土城下で浄土宗と法華宗が宗論を行った歴史的事実(これを、安土宗論と言います。)から来ているようです。この宗論においては、「方座第四の『妙』」という言葉の解釈が論点となり、法華宗側がその説明ができなかったことから、信長により、浄土宗の勝ち、法華宗の負けという判定をなされたものです。浄土宗が負けても、法華宗が負けても、お釈迦様にとっては恥ずかしいということなのですね。しかしながら、本来宗論というのは、所詮あの世に行ってみないとわからないことを論争するものですから、どちらが真実かということは判定できないはずです。証拠を出すことができませんし、阿弥陀如来を証人喚問もできないでしょうから。安土宗論では、そのような観念論の論争において、ある意味テクニック負けしてしまった(勉強不足?)法華宗ということが言えるのかもしれません。

 STAP問題で、小保方女史は、「STAP細胞はあります。」と記者会見で主張していましたが、なんだか上で述べたような「宗論」を思い出した次第です。彼女の観念論においてはSTAP細胞は存在し、200回も生成したのであって、それを実際に言葉として述べることは自由なのかもしれません。
 しかしながら、STAP細胞問題は、科学の分野の問題です。宗教論争と違って証拠を以て立証しなくてはならないのですが、どうもそのあたり、小保方女史は、「信じるものしか見えません。」的な主張に終始して、何よりもいけないのが、小保方女子の代理人である弁護士ですが、その弁護が「主張」と「立証(証拠)」がごっちゃになっている感があります。

 なによりも、小保方女史が、あくまでも自分の観念論を突き通すのであれば、その代理人弁護士としては、絶対に小保方女史の「主張」であるネイチャーに掲載した論文を撤回することだけはしてはいけなかったのではないでしょうか。安土宗論に負けた法華宗も、決して自論を撤回してはいませんからね。その時は立証できなくても、ガリレオ・ガリレイのように後世において立証(もちろん、ガリレイ自身立証していたのですが、宗教裁判所が解釈として否定したのだと思いますが)されるということだってあるのですから。
 ということで、小保方女史がアウトになったのは、立証レベルでは、自分の研究室からES細胞が出てきた事実なのでしょうが、何よりも主張レベルで、自説を撤回しているのですから、裁判で言えば、その時点で訴えの取り下げ(というより、請求の放棄か?)ということとなりアウトなのでしょう。そして、自説を撤回しているのだから、まあ、理化学研究所の再現実験に協力する必要も理屈的にはなくなっているのでしょう。
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